――辰巳開発(株)グループでは、辰巳開発さんが開発した宅地に上物を建てて販売するという、いわゆる建売が主流なのですか?
今村:とんでもない、当社の場合は90%以上が注文住宅です。
当社は創業以来、常に開発した団地の資産価値の向上を目指した街造りを行なってきました。
最近(ここ2、3年)でこそ、大手住宅メーカーを中心にサスティナブル・タウンなどと称し経年ごとに街並みの価値が上がる家造り、街造りをしようとの提唱がなされていますが、当社は数十年前から同じことを言い続け、やり続けてきたのです。
しかし、最近、私どもの家を購入された若い世代は共稼ぎのご家庭が多いためか、近所の方からご自分の家の塀の内側は掃除しても街路の掃除や樹木の手入れ(水差し、雑草駆除等)などをあまりおやりにならないとの通報が役場に寄せられるのです。樹木を大切にするどころか、落葉が嫌だといって、大きく育った街路の樹木の伐採を役場に申し入れる家庭まであります。役場も役場でそういった少数意見であっても申し入れがあると開発業者に「大きく成長する立木は植えてくれるな」などと言ってくる。皆で、あの団地に住みたいと言われるような街に育て上げていけば、家が経年劣化しようとも総合的な資産価値は向上していくんです。そういう街造りを住人と共に今後も続けていきたいと思っています。
当社の住宅部門3社は在来工法、ツーバイフォー工法、両社のミックス型等を取り扱っておりますが、コスト的には殆ど差がないと思います。ただし、耐震性能的にはツーバイフォー工法がやや優れているかと考えています。
今期以降も積極的に攻めるといっても、住宅購入希望者のボーナス等を含めた所得の伸びが全体的に低下するとみられることが多少心配です。そのためにもコスト削減への取り組みは欠かせません。
貴社の情報誌『I・B』の記事で紹介された地場大手問屋のO社は当社の主力中の主力取引先ですが、杜撰な材料管理を行なっているようですね。
これからの厳しい時期を乗り切っていくためには、当社の予算の範囲内で費用が収まっているからと満足するのではなく、仕入先や外注先の施行、納品にロスがないか目を光らせ、ロスがある場合には改善を指摘し、当社は勿論、先方にもメリットがあるようにする。そして利益を共有するようにしなければなりません。そういうことを役員会でも指示し、実行していきたいと考えております。
――市場が急速に収縮していく環境下で成長していくためには、企業イメージを世の中に浸透させていくとともに、「○○社の家」という商品イメージを露出させることも必要だと思います。特に朝日新聞が販売部数の減少と広告掲載件数の激減等で、今期は一説によると約200億円近い赤字を計上するのでは、という噂も流れています。また、大手スーパー等では「チラシ」の折込を止めるところなどもでてきております。皆様方の今後のPR戦略は?
今村:当社のような開発分譲型の住宅業者は如何にして現地にお客さんを呼び寄せられるかが課題です。最近は新聞等での織り込みチラシからの動員力がめっきり効果を失ってきました。以前は捨て看板による動員力が効果的だったのですが、これも条例等で規制され用いることができなくなりました。インターネットを含めた新しい媒体開発が急務です。
藤木:確かに、新聞のチラシ折込の効果が激減してきております。元来チラシの効果は折込み配布から3~4日間と言われてきましたが、最近の住宅の主たる購入者層である30代前後の年代層の活字離れ、特に新聞購読者数の急減の影響が大きいですね。それで当社はホームページの刷新やバナー広告の強化等、新媒体開拓に躍起です。
中 :当社でもチラシ配布以外に、TVや住宅雑誌、インターネット配信、バナー広告等利用できる媒体をいろいろと模索し検証しております。高価格帯の商品構成なので顧客層は医者などの高額所得者や官公庁、教育者等の夫婦共稼ぎの合算所得層が多いのですが、そういった層は北米や欧州等への旅行や出張経験が多くライフスタイルを含めた住まいへの理想像があるようで、ビジュアル面を含めて高品質の住まいをご紹介できる内容にしていかなければと考えております。
――本日はお忙しい時間をぬって弊社の企画にご協力いただき、また、貴重なお話をお聞かせくださり、有難うございます。
皆様の元気の源は、積極的なチャレンジ精神と社会の激動に呑み込まれることのない、自助努力の精神と工夫にあるとみました。今後とも切磋琢磨してご発展を続けていかれますことをご祈念申し上げまして、本日の座談会を締めくくらせていただきます。