金融庁は11月28日、8月に倒産した不動産会社アーバンコーポレイション(広島市)が破綻直前に行なった資金調達の引受先となった仏金融大手、BNPパリバ証券東京支店(安田雄典・在日代表)に金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。
金融庁は、資本市場の担い手である証券会社が自らの利益を優先し、重要な情報を開示しないようにアーバンに働きかけたのは投資家への裏切りで、経営管理体制に「重大な欠陥」があると断じた。
しかし、市場関係者からは、情報隠しだけを業務改善命令の理由としたことに疑問の声が上がる。パリバの不法行為の核心は、インサイダー取引疑惑にあるとみなされていたからだ。金融庁はインサイダー取引を不問に付した。問題の取引を検証してみよう。
情報隠しで行政処分
金融機関からの新規借り入れや借り換えが困難になったアーバンは今年6月26日、パリバを引受先に総額300億円のCB(転換社債)を発行する計画を発表。同時に、アーバン株が下がると、調達額が減るスワップ契約を締結していたが、これは公開しなかった。
7月11日、アーバンはパリバにCBを発行した。「資金は短期借入金の返済に使用する」が、CB発行の理由。市場では「当面の危機は去った」という見方が広がった。しかし、実際にアーバンが調達した資金は300億円ではなかった。
スワップ契約にもとづき、300億円はすぐにパリバに払い戻され、パリバはCBを株式に転換した上で、株価変動に応じて分割払いされる仕組みとなっていた。パリバは支払額を減らすために、アーバン株を空売りした。
この結果、アーバン株が下落。アーバンは約91億円しか調達できず、資金繰りに行き詰まって8月13日に民事再生法を申請する要因になった。
このスワップ契約の存在は、8月の破綻時にアーバンが初めて開示した。アーバンが300億円を調達済みと考えていた投資家を欺く行為として批判が集まった。
しかも、パリバが同社しか知り得ないスワップ取引の存在を知りながらアーバン株を取引していたことは、インサイダー取引ではないかとの疑惑を招いたのである。(日下淳)
つづく