◆「政策転換」で倒閣運動が発火
「これはすべて私の責任だ。真摯に謙虚に受け止めなければならない」
麻生首相は12月8日の自民党役員会で支持率低下についてそう語った。
だからといって、今のところ辞任する気は全くない。
「麻生らしい思い切った政策が足りなかった。野党からも雇用対策の要求がきている。総理は国民が驚くような超大型の雇用対策を打ち出して起死回生をはかるつもりだ」
麻生側近議員はそう語る。麻生首相が突然、共産党の志位和夫・委員長、社民党の福島瑞穂・党首と相次いで会談して雇用対策を話し合い、与党内を驚かせたのも、来年1月からの通常国会に“奥の手”の超大型対策を出し、民主党が反対すれば、共産、社民を抱き込んで野党を分断しようという腹があるからだ。
しかし、それは両刃の刀でもある。
霞ヶ関では財務省が麻生政権に見切りをつけており、「第2次補正予算も来年度予算の骨格もすでに決まっている。いまからそんな大型の予算組み替えは不可能」(主計局幹部)と非協力的であり、たとえ麻生首相が言い出しても実現できずにまた“絵に描いたモチ”に終わる可能性が高い。
そればかりか、自民党には麻生首相の「政策転換」を倒閣のきっかけにしようと手ぐすね引いている不気味な勢力がある。
「財政再建派」の与謝野馨・経済財政相と、小泉改革の継続を唱える「上げ潮派」の中川秀直・元幹事長だ。
「与謝野は2兆円給付金の所得制限を言い出して閣内を混乱させた麻生政権の獅子身中の虫。総裁選に小池百合子を担いで破れ、反主流派に回った中川は渡辺、塩崎ら上げ潮派の倒閣運動をけしかけている黒幕だ」
先の麻生側近はそう見ているが、犬猿の関係だった2人は最近、「マージャン会談」を持つなど急接近している。
「麻生首相が筋の通らないバラ撒きを言い出せば、与謝野さんは“抗議の閣僚辞任”をし、中川さん、小池さんらのグループが動き出す」(自民党若手議員)という見方が強い。若手・中堅の造反部隊に、与謝野、中川氏という実力者が加わることになる。
「そう遠くない時、本当の勝負所を迎えるのではないか」
中川氏はさる12月8日の渡辺氏主催の政局セミナーの挨拶でそう語った。
その背後に見え隠れしているのが、民主党の小沢一郎・代表の大連立構想だ。そこには「小沢の盟友」と言われる与謝野氏だけではなく、かつて『加藤の乱』を起こした加藤紘一、山崎拓両氏までが同調する動きを見せている。