昨日公開された「厚生労働行政の在り方に関する懇談会(4回目)」の議事録(以下、厚労懇)。奥田碩トヨタ自動車相談役による、厚労省批判を展開するマスコミに対する恫喝とも取れる発言の全容が明らかとなった。それによれば、会議の席上、浅野史郎慶大教授(元宮城県知事)とのやり取りの中で、報復のためにスポンサーを降りると言いながら、実際には既に「降りるぞというのではなくて、もう現実にそれは起こっているわけですよ」と話し、広告費削減はトヨタの業績悪化が原因であることまで露呈してしまった。問題はこの後に続く奥田氏の発言である。
「だから、今もうテレビ局なんか、正直言って、広告取りに走り回っているわけですけれども、ところが結局聞いてみると、マスコミというのは経営権と、それから編集権は独立したものであって、編集権には経営者は介入できないという話があって、だからいろいろ問題があって、こんなのはおかしいとか言っても、上のほうは編集権に介入できないから何もできませんと、そういう言い方をするんですよね」
圧力、既にかけていた?
どうやら奥田氏はスポンサーの立場を利用して、「編集権」に介入しようとした経験を有しているようだ。「いろいろ問題があって、こんなのはおかしい」と言うからには、広告が欲しければ厚労省に批判的な番組を何とかしろと言ったのか、あるいはトヨタ自動車の業績不振に対する報道がけしからんと言ったのか、何らかのアクションを起こしたことは事実なのだろう。いずれにしろ日本経団連の会長まで務めた方とは思えぬ見識の低さである。広告料金と引き換えに番組内容や報道がゆがめられてしまえば、マスコミの存在意義は失われてしまう。報道の自由など知らなかったということなのだろうか。
さらに奥田氏は「上のほうは編集権に介入できないから何もできませんと・・・・」と続けている。
上のほうとは「経営権」を持った人間のことを指していることが明らかである。つまり、奥田氏はマスコミのトップと「あの番組(あるいは報道)を何とかしろ」という話をしていたことになる。
実力行使に及んだが、ダメだったから懇談会と言う公式の場で、腹立ちまぎれに「恫喝」してしまったということなのだろう。
いずれにしても、厚生労働省がこの懇談会のお陰で良くなるとは思えない。実は、懇談会の議事録からは、奥田氏以外の委員の問題発言が見つかった。