今年秋、総務省における07年分の政治資金収支報告書公開日のこと。上野公成元官房副長官の関連政治団体を調べるうち、これまで見たこともないような事実関係が浮かび上がった。1年3ヶ月で1億5,000万円超。たったの2社で1人の政治家に提供する政治資金としては、けた外れの額が判明した。しかも、いくつもの団体を使い分け、通常では考えられない回数の政治資金パーティを開催している。政治資金規正法上の問題も散見される。「何かある!」疑問は疑惑へと変わった。積水ハウス(大阪)、大和ハウス工業(大阪)。住宅メーカーの中では、図抜けた存在である2社による巨額政治資金提供の全容が判明した瞬間でもあった。
実は、すでに06年分の政治資金収支報告書から、積水・大和両社が上野元副長官側のパーティ券を3,000万円づつ購入していたことを掴んでいた。参院選挙の年でもあった07年分には、多少の上乗せがあろうと予想していたが、これほどの金額に膨れ上がるとは思っていなかったのである。上野元官房副長官は、政治家に転身する前、住宅メーカーの事業を所管する住宅建設課長や住宅生産課長などを歴任していた。07年選挙では住宅業界や不動産関連業界が上野元副長官を支援していたことも知られている。そして、現在も積水・大和と密接な関係にある。典型的な政・官・業の構図である。そこに「癒着」を証明する事実が明らかになった時、疑惑は「事件」に発展することを歴史が証明している。もちろん、今回のケースがそうだと言っているのではない。しかし、2社を頂点とする住宅業界の団体は、税制に関することをはじめ、何かと国に要望を出してきた。いわゆる族議員に対しては、一定の距離を置くことが要求されて然るべきである。しかし、積水・大和という競合する業界のトップ2社が、常識では考えられない手法で政治資金を提供したのには、何らかの理由があるはず。その闇に切りむことで、政治の歪みを正し、住宅政策を健全なものにすることこそ報道する側の使命であると考える。
上野公成氏は元官房副長官という国家の中枢にいた政治家である。耐震偽装問題で登場した「日本ERI」から献金を受けていたことも指摘されていた。その日本ERIには大和ハウスなどの大手住宅メーカーが出資している。
一方、積水ハウス・大和ハウスは、コンプライアンスには敏感な優良企業だと考えてきた。特に積水ハウスは、監査役に元検事総長を据えるなど、トップ企業としての社会的意識も高いと思っていたが、取材に対する対応を含め、疑問を感じることばかりである。
1億5,000万円という金額は、サラリーマンにとっては途方もない金額である。「政治資金パーティ」という便利な抜け穴を使い、巨額政治資金が提供された今回の問題を徹底検証し、「闇」に光を当てていく。