証券化商品への投資による損失で1兆円超の資本増強を実施することを発表した農林中金の波紋が、新規就農者への支援にまで広がっている。
農林中金は財務基盤を強化するため、2009年3月末までに1兆円超の増資を計画しているが、その増資の引受先となるのは農業、林業、漁業関係の会員となる。
その結果、とある30代男性は自己資金を用意した上で今年の春から新規就農の相談を農協と進めてきたが、突然に就農支援での資金貸付ができなくなった旨を農協から伝えられたという。農林中金の失敗が新規就農を妨げた形だ。
食料自給率の重要性が叫ばれる昨今、一時的にせよ金持ちしか農業を始められない状況は、日本の「食」にとって致命的なものともなりかねない問題。農林中金の波紋は、農業の未来が危ぶまれる事態を招来している。【児玉崇】