出光興産も合流か
こういった背景を踏まえれば、新日石と新日鉱の統合の意味が理解できる。
両社は統合の狙いを簡潔に表明している。両社合わせて国内10カ所の石油精製施設のうち2カ所を削減、両社で約1万3,600カ所にのぼるGSのうちの2~3割を削減する。これにより、統合後2年間で最大1,000億円のコスト削減を図る。過剰の2割を切り落として、元売り、GS両方の収益力を回復させる手段が統合というわけだ。
両社の経営統合で、ライバル各社の合従連衡は不可欠だ。新日石=新日鉱連合と他の元売りとの間にコスト競争力の差が生じるためだ。
次なる再編の焦点は、「大家族主義」というユニークな経営で知られる出光興産。かねて新日石と新日鉱傘下のジャパンエナジー、出光興産の民族系3社の共同精製会社構想が囁かれていたが、それが現実味を帯びてきた。出光興産は、精製部門にとどまらず、新日石=新日鉱連合に合流する可能性が高いだろう。
アブダビ首長国政府系投資会社が筆頭株主になったコスモ石油は、民族系大連合に加わるのか。もともとコスモ石油は、新日石と精製・物流などで提携して、新日石グループとみなされていたからだ。
エクソンモービル系の東燃ゼネラル石油とロイヤル・ダッチ・シェル系の昭和シェル石油の外資系2社は、民族系再編にどう対抗していくのか。特にエクソンモービルについては、世界でも収益性が低い日本部門の売却や撤退が常にうわさされていた。エクソンやシェルのメジャーの方針転換があれば、業界地図はガラリと変わる。
元売り会社の統合が、特約店・販売店・GSの再編・淘汰を加速させるのは必至。将来は元売り直販比率が5割を超えるという予測さえある。
新日石と新日鉱の統合で開幕した業界再編の第三の波は、業界地図を塗り替えることになる。
石油元売業界売上高ランキング | |
社名 | 売上高(連結、単位億円) |
(1)新日本石油 | 75,239 |
(2)新日鉱HD | 43,394 |
(うちジャパンエナジー 31,939) | |
(3)出光興産 | 38,642 |
(4)コスモ石油 | 35,230 |
(5)昭和シェル石油※ | 30,826 |
(6)東燃ゼネラル石油※ | 30,498 |
(決算月は昭和シェル石油と東燃ゼネラル石油が07年12月期、他は08年3月期。HDはホールディングス。※は外資系) |
(日下淳)