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<福岡の識者対談>2009年の日本・アジア経済を読む(その3)
特別取材
2009年1月 2日 11:39

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―財政政策とは具体的にどういうことですか

立石: 中国では今、4兆元(約60兆円)の内需拡大を2年間で行なおうとしている。中国が早めに対策を打てる背景に中国が黒字体質だということがあります。これが日本やアメリカとの違いです。また金利は、これまで7%だったものを5回下げ、12月22日現在で5.31%まで落とした。ただ、まだ余地があるわけですよ。過大な期待ではないですが、中国が新しい政策を打とうとしていることはたしかです。
国吉: 08年の初めから中国の投資環境は大きく変化しています。外資に対して優遇税制を無くしたとか、新しい労働契約法が施行されたとか、08年8月から独禁法が中国で実施されたとか。これは胡錦濤政権のひとつの方向性として、成長優位から調和ある社会を作る。つまりバランスが取れた経済発展をするというなかで、労働者の権利保護をするように大きく流れが変わった。
 貿易では、対米黒字という問題で元高に対するプレッシャーがあった。一時は輸出を抑制するような政策もありました。しかし08年9月以降、増値税の輸出還付率を引き上げるという方針にぱっと転換した。内需拡大と同時に外需、貿易も増やすという政策をとっています。ただ、中国国内が巨大なマーケットですから、まずはそれを大きくしようというのが一番大きな方針のようですね。その辺が実務レベルから見える流れです。比較的早く手を打っているなという印象です。
立石: 中国と一緒に仕事をしている人たちからの情報で、最近は中国も大変だという話も聞きますが。
国吉: 新労働契約法の影響はどの程度出ていますかと現地の人に聞きましたが、たとえば台湾系、香港系、韓国系あたりの企業は倒産や夜逃げで閉鎖しているようです。ただ、大連の日系企業は意外と大丈夫みたいですよ。比較的法令を順守していますから。業種や製品によって当然違いますから、一概には言えませんが。
立石: 中国は成長率8%台を死守したいようです。ただ08年11月の時点では、IMFが世界経済は中国が下支えすると言っていましたが、今後は5%台にまで成長率が落ちるとも言われています。これは、失業者が増えてそれを吸収できない数値です。ここで4兆元の財政政策が効きはじめる。四川大地震の復興に加え、住宅、農村の振興など、4兆元の使い方は非常に聡明だと思います。また中国国内の経済学者は、まだ強気に8%台を維持できると言っています。
国吉: 中国は、我々の想像とはまったく違う内需のボリュームを考えているみたいですね。胡錦濤政権はシビアな勉強会を毎月し、喧々諤々の議論をしているようですし。日韓米とは違うスケールの大きさを感じますね。

(つづく)

▼出席者(写真左から)
立石 揚志(西南学院大学 商学部 教授)
篠原 統(第一施設工業 代表取締役)
国吉 澄夫(九州大学 アジア総合政策センター 教授)

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司会進行: 弊社代表 児玉 直
文・構成: 大根田 康介


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