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<恐慌前夜>副島隆彦がみる2009年、日本経済の行方(3)
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2009年1月 3日 07:00

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 米国経済が昨年の2007年7-9月期までなんとか好景気を維持していたのは、個人消費が好調だったことによるところが大きい。居住物件の資産価格が高騰していたので、それを担保にさらに住宅ローンを借り増しし、消費にも回していたからに他ならない。

 米国は巨大な「借金国家」なのであり、世界中から資金を流入させて使い散らし、何とその借金した(取り込んだ)資金から配当を支払っていたのだ。まさに“ネズミ講”(Ponzi business ポンツィー・ビジネス)そのものである。あるいは、米国が世界に対してやったことは“振り込め詐欺”そのものだ。借りた金を返す気はないのである。

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 米国の金融機関(投資銀行)はおおむね自己資本の30倍ものレバレッジをかけて契約(各種債券の販売)をしていたとされる。CDS(シー・ディー・エス、クレジット・デリバティブ商品)の総契約残高は、08年7月時点で60兆ドル(6,000兆円)あったが、現在は、溶け合い(契約の解消・解約、dissolution ディソルーション)で、40兆ドル(4,000兆円)まで減っているようだ。

 リーマンブラザーズが9月15日に破綻して、裁判所に提出した書類で明らかになったCDSの残高は4,000億ドル(40兆円)であった。米国の主要な銀行・証券の負債の1割弱を占めるリーマン関連のCDS債の「溶け合い」を主要10行が集まって「相対取り引き」を1本ずつ解消(解約)して、最終の負債額を、なんと想定元本の1.2%の54億ドル(5,400億円)にまで減らした。これなら一行当たり500億円(5億ドル)だから返済可能である。

 このケースを他の事例にも適用していくことで、今後どこまで解消、解決させていくことができるかが焦点になってくる。

 デリバティブ(金融派生商品)取引の残高は、総額で800兆ドル(8京円)あるようだ。このうち、どうしても処理しなければならないのは2%に相当する16兆ドル(1,600兆円)だとされている。

 しかし私は、5%に相当する40兆ドル(4,000兆円)をどうしても実額、実損で今後何年かかろうとアメリカの金融業界は政府の支援を受けながら処理する必要があると思っている。それには5年ぐらいかかるだろう。この金額だけは、どれほど大きな痛みを味わいながらでも米国は片付けなければならない。

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 一般国民の次元でいえば、前述の通り年金や生命保険が打撃を受けることが大問題となる。10月10日に大和(やまと)生命が破綻した。総資産が2,580億円に過ぎない小規模な生命保険会社だが、契約者に支払う予定利率(支払い保険金の割合)が元の契約金額の3分の2にまで削られることになった。40%とか30%の数字になるだろう。

 2000年10月に協栄生命が破綻した際には3.8兆円の団体信用生命の保険金総額があった。あの時は、保険金の減額は1割程度で済んだようだ。しかし今回は、すべての契約者に対して大きな負担を強いることが避けられそうにない。最終的には、年金の積み立てプランなども含めて契約額の3分の1にまで減額されるだろう。

 合計で450万人の国家公務員と地方公務員の共済組合本体の契約であれば、しっかり日本国債で運用しているだろう。が、民間の各種の共済組合や年金運用団体の年金、保険の積立資金は単体で運用されている。ここが、外債投資(デリバティブ債券買い)でかなりの打撃を受けているが、まだ明るみに出ない。

 これらの年金運用団体や共済組合は団体信用生命が主体である。たとえば親会社のAIG(エイ・アイ・ジー)が本国で実質破綻した。AIGエジソンが扱っている分が大きいのだが、AIG本体の破綻とともに日本国内の子会社も連鎖して実質破綻しているので、こうした年金を扱っている組織は文字通り震え上がっているだろう。

 生保業界はその多くが相互会社だったのが、最近では株式会社に移行する動きが見られた。これから再び相互会社(非営利組織)に戻していくだろう。完全な民間企業である株式会社よりはその方が公的資金を容易に注入できる。生保の最大手の日本生命は、AIGとかなりの再保険契約を結んでいるので、この点からも相当に危ない状態になると思われる。

 通常なら、公的年金団体にも民間の生保業界にも「外債買いは2割まで」の「2割ルール」があるはずで、外債での運用は10~15%程度でしかなく、多くても2割が限度である。それを度外視して、無理やりファニーメイやフレディマックが発行した機関債や、それが保証していたRMBSを米国の圧力によって買わされていた。それらの事実はまだ一切明らかになっていない。

(つづく)

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副島隆彦(そえじま・たかひこ) → 副島隆彦の学問道場
<プロフィール>1953年5月1日、福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。銀行員、代々木ゼミナール講師を経て、現在は常葉学園大学教授。政治思想、法制度論、経済分析、社会時事評論などの分野で、評論家として活動。日米の政財界、シンクタンクなどに独自の情報源をもち、日本人初の「民間人・国家戦略家」として、日本は国家として独自の国家戦略を持つべきだ、と主張している。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。


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