■ 消費者不在に風穴を
―5都市に新規出店ということで、一気に全国展開しているように見えますが。
青木: 全国展開はもともと視野にありました。そもそも、昭和35年の創業当時からタクシーは規制業種でした。電鉄系や地元の名士がタクシー会社を手掛けている程度でしたが、高度経済成長で人が動くようになり、タクシー需要が増えたにも関わらず供給が増えない。なぜか。それは人材が集まらなかったからです。
当時はマイカーを持っている人が少なく、公共交通機関の充実化が必要とされていました。タクシーもそのひとつで、当時の運輸省が新規免許を各地域で募集しました。京都で父が手を挙げたら、たまたま申請が通りました。
―それがMKタクシーの出発点なのですね。
青木: 父は10台からタクシー会社を始めましたが、この免許は京都限定のものでした。他地域に進出しようと思ったら、免許を地域ごとにとらなければならなかった。他の地域でも京都の免許が使えるように、また自由に出店できるようにしておかなければおかしいですよ。
タクシー業界が自由化されたのは、昭和35年から平成14年まで飛ぶわけです。父は昭和50年ごろから全国展開したいという思いがずっとありましたが、規制でうまくいかなかった。
―そこに御社が風穴を開けたと。
青木: 料金すら自由にならなかったため、当社は昭和58年に値下げ裁判をし、国に勝ちました。同一地区・同一運賃は独禁法にひっかかるという判決理由でした。ここから、いろいろな規制に風穴が開きました。平成4年に値下げ申請をして、翌年には京都に値下げ運賃第一号のタクシーが走るようになったんです。
―しかし一方で、規制緩和の負の側面も出てきました。
青木: 規制緩和で事故が増えたというニュースが流れたこともありましたが、それは違います。行政がきちんとコントロールしないのがいけません。業者の責任にしてはいけない。きちんと業者を監督できないようなら、「監督官庁」と名乗るなと言いたいわけです。
規制緩和した平成14年、同時に自動車事故対策センターでドライバーは適正診断を受けなければならないという通達が出ました。診断には8,000円くらいかかり、たとえば当社が200人採用したとしたら、ドライバーの適正診断のために160万円かかります。そこには国土交通省の天下りがたくさんいるわけです。そんな組織を官僚は作り上げてしまいます。これでは、もし事故が起こったら行政の責任じゃないかという声が上がって当然です。
―よく分からないのは、2008年に入ってタクシー業界で再び規制が始まったことです。
青木: それは、業界と労働組合が緩和は困るということで規制を再び求めているからでしょう。消費者目線に立てば、規制緩和で確実にサービスは良くなったと断言できます。とにかく今の方向は消費者不在です。2007年12月に福岡で値上げしたでしょう。私はそれがチャンスだと思い、福岡に進出したのです。
(つづく)
昭和35年に青木定雄氏が京都で創業し、2年後に50周年を迎えるMKタクシー。京都、東京、大阪、神戸、名古屋に営業拠点を有し、来春にかけて札幌、横浜、滋賀、広島、福岡でも順次開業。「MKタクシー緊急全国雇用創出計画」で全国1万人の新規雇用を打ち出し、世間を驚かせた。この度、福岡の代表をつとめることになる、定雄氏の三男で神戸・大阪・名古屋MKタクシー㈱代表取締役社長の青木義明氏に、規制との戦いと今後の展開について話をうかがった。(文・構成:大根田康介)
【京都本社】
所在地:京都市南区西九条東島町63-1
設 立:1960年10月
資本金:9,500万円
売上高:(07年度)約405億円(グループ全体)
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