【気になる本、ナナメ読み】 vol.1
本書は、福岡県北九州市の九州工業大学鉱山工学科を卒業し、現・太平洋セメントで役員を歴任した著者が、『メタル・ウォーズ』に続いてメタル資源の獲得競争の様子を描いた作品。「ピーク・オイル」だけでなく、もはや「ピーク・メタル」(レアメタルだけでなくメタル資源全体)の時代に突入したと著者は指摘する。
2000年頃からBHPビリトンやリオ・ティントといった、メタル資源メジャーの寡占が進み、一方で中国が世界中で資源囲い込みに奔走(本文では「中国のメタル爆食」と表現)している。そのなかで「ものづくり立国」日本はどうあるべきかを問い直す。
著者は、日本が資源競争を生き抜き「ものづくり立国」として再生していくためには、サプライ・チェーンの川下(=製造業・最終製品、川上は原料供給など)優位のパラダイムを転換したうえで、(1)国家の長期的資源戦略、(2)資源の教養を(政治・経済・生物学など総合的に)身につけたエリート人材の育成が大切だと述べる。
ほかにも、世界の資源国で起こっている暴動や鎮圧、経済格差などの問題を資源囲い込みの視点から読み解くあたりは面白い。なぜ面白いと感じるのか。著者風に言えば、我々日本人があまりに資源問題に関して無知・無関心であるからだろう。その点、中国は非常にしたたかな国家的戦略を持って世界を飛び回っているようだ。
福岡でも北九州市や大牟田市でレアメタルの回収とリサイクルを積極的に進める動きを見せている。ただ、リサイクルだけではなく、極力使わない(=生産性の向上)のも必要だと著者は指摘する。
【 大根田康介 】
▼次に不足するのは銅だ | ▼メタル・ウォーズ |
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