最後の勝負は金庫株の扱い
鈴木会長兼社長の最後の大仕事は、米ゼネラル・モーターズ(GM)から買い戻した金庫株の扱いだろう。
スズキは1981年にGMと資本提携。GMの傘下に入り、スズキの出資比率は一時、2割に達していた。GMの業績悪化に伴い2006年には3%に縮小。さらにGMの経営危機により残りの3%も08年11月、スズキが買い取った。
GMが保有していたスズキ株は、スズキが買い戻し、手元に置く金庫株とした。その結果、金庫株の比率は19.9%に達した。東証上場企業平均2.3%を大きく上回る。
金庫株は消却するのが通常だが、スズキは自社株を消却していない。GMは再建後、スズキ株を買い戻すと約束していたからだ。
だが、破綻の瀬戸際に追い込まれているGMが再建するとしても、遠い先のこと。それまで金庫株として持ち続けるわけにはいかないだろう。
金庫株を処理する際の選択肢は4つ。消却する、市場で売り出す、取引先にはめ込む、そして資本提携先への売却である。企業の命運を決定付けるのは4番目。GMに代わる新たなパートナーとの提携に活用することだ。
鈴木氏にとってGMは最愛のパートナーであるため、GMが買い戻すまで金庫株として持ち続けるのではないかと見られている。一方で、自分の目が黒いうちに、スズキ100年の大計を立てるには、金庫株を、提携先を探すカードに使うのではないかという見方も、有力だ。
世界の覇者だった米ビッグスリーを事実上の破綻に追い込んだ自動車恐慌。この難局を、スズキは、どこと手を組んで生き残りをはかるのか。百戦錬磨の経営者、鈴木修氏の最後の闘いである。(日下淳)
※記事へのご意見はこちら