12日、渡辺喜美元行政改革担当相が、13日に自民党を離党することを正式に表明した。地元栃木県の支持者に離党に至る報告をした後、改めて会見を開いた。離党後は国民運動を起こすのだという。
「言うことを聞いてくれなければ離党する」として首相に迫り、袖にされた結果であるから仕方あるまいが、一体何の国民運動を起こすのか判然としない。官僚の天下り禁止や、定額給付金の撤回など、渡辺議員が麻生首相に突きつけた内容は、確かに世論受けするものばかりである。本来、総理・総裁が気に入らなければ、同志を募り、倒閣に動くのが筋だと思うが、いきなり「離党」では政党政治への信頼が失われかねない。党首が気に入らないからといって、そのたびに離党していたのでは行く場所(政党)は無くなってしまう。
自民党内にも定額給付金に首をかしげる向きは多い。官僚の天下り反対を唱える議員もあまたいる。しかし、渡辺議員の動きに同調する声は聞こえてこない。そう思ってはいても我慢しているのだろう。いったん決めた以上、苦しくても党人として説明責任を果たすことが要求されるし、多くの議員がそうではないのか。それが政党人の政党人たるゆえんである。
昨年は民主党の中から党の方針に逆らって離党した議員達がいた。民主党の看板に投票した有権者を裏切った責任は重い。離党ではなく議員辞職をすべきだった。こんな人たちが増えれば、政党交付金の存在意義も失われてしまう。政党人とはどうあるべきか、改めて考えさせられる。
民法テレビに生出演中だった麻生首相は、渡辺氏の離党表明について聞かれ「何をしたいのか分からない」といった趣旨の感想を述べた。この点だけは同感である。
渡辺氏は、自らの信条や政策を実現するためバッジをつけているはずである。国民運動をやると言うが、何を目的にしようというのか、明確に提示すべきであろう。そうでなければ選挙目当て、パフォーマンスとの批判が消えることはない。
※記事へのご意見はこちら