1.訴訟経緯及び決定内容
2007年5月10日佐賀銀行主導のもと敢行された(株)東峰住宅の会社譲渡に関して、東峰住宅が金融機関から借り入れていた約37億円の処理について同行は、個人株主より佐賀地方裁判所へ情報開示を求める訴訟を受けていたが、同裁判所は08年12月26日、申請人(個人株主、以下A氏)が、被申請人(株式会社佐賀銀行、以下同行)の07年3月22日付取締役会議事録((株)東峰住宅のM&Aに関する議案)を謄写することを許可するという画期的な決定をなした。
2.訴訟事情
(株)東峰住宅は、同行をメインバンクとした不動産管理の春吉住宅が負債総額53億円により福岡地裁から特別清算決定を受けた際、同行の意向により同社のマンション販売部門を新会社として継承した会社である。「東峰」「スプラウト」等のブランドでマンションや一戸建て住宅の開発販売を行なっていたが、販売成績が上がらず、僅か3年で同行の決断により、香川県に本社を置く穴吹興産(株)に会社を譲渡したものである。
A氏の訴状によれば、東峰住宅の05年12月期における金融機関借入約37億円のうち、同行からの借入金は約63%の23億3,171万円に及んでいる。A氏は、穴吹興産に会社譲渡した金額が低く、東峰住宅が有する総資産額のデューデリジェンス(資産査定額)にも疑念を抱き、同行主導で行なわれた会社譲渡において、穴吹興産から得た売却代金をどのように各金融機関へ配分したのか、同行の取り分額を開示せよと訴訟を起こしていたものである。
状況次第では、取締役に対する損害賠償請求も視野に入れているようである。
【 久米一郎 】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら