【気になる本、ナナメ読み】 vol.5
同書は『恐慌前夜』でおなじみの副島隆彦氏と、「外務省のラスプーチン」の異名をとり『国家の罠』などを著した佐藤優氏との“異色”の対談である。この組み合わせを実現させた凄さもさることながら、内容も大変示唆に富んでいる。
副島氏は、日本は新統制経済体制国家(ネオ・コーポラティズム)になりつつあり、預金封鎖や急激な法律改正などが行なわれ、果ては目に見えない独裁者と官僚たちが常に国民生活を監視する社会になると指摘する。確かに、近年の政策を見ているとうなずかざるを得ない実例が多々ある。また、佐藤氏の持つロシアとその周辺に関する豊富な情報・知識は、グルジア問題などの裏側を知る上でも非常に参考になる。
同書は、「二人の異才が恐慌化した後の世界像を預言(予言ではない)する」本だと言えよう。世界でアメリカ(ドル)外しの動きが出ているようだが、では世界覇権(ワールド・ヘゲモニー)を握るのはどこか。また、新統制経済体制を迎えつつある日本はどこへ向かうのか。そうしたマクロの問題をマクロの視点で解き明かす掛け合いが絶妙だ。
【大根田康介】
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