コラム「迷走する建築士業界」
■疑念渦巻く試験内容
こうした問題は、改正建築基準法だけにとどまらない。昨年9月24日に結果発表された構造設計一級建築士の試験の採点方法について疑念が渦巻いた。
まず結果から言えば、一般受講者が受講数7,689人に対して合格者2,261人(29.4%)、適判資格者が2,299人に対して2,299人(100%)、建築構造士(JSCA)などの有資格者が2,056人に対して1,423人(69.2%)で計5,983人(49.7%)の合格者となった。
この結果を見て、試験を受けた一般受講者はどのように感じただろうか。こちらに届いたのは「不公平極まりない」という声だった。それはなぜか。今回の試験は午前の部と午後の部に分かれており、建築構造士などの有資格者は午後の試験が免除されていたからだ
では、午前の部はどのように採点されたのであろうか。仮に午前50点、午後50点の計100点とすれば、60点(各60%)がボーダーラインと見られていた。一般なら前半と後半で各30点以上とる必要があったと予想される。
ここであえて「予想」と書いたのは、実は採点方法が不透明だからだ。この点について(財)建築技術教育普及センターに取材を試みるも、「採点内容は教えられません」の一点張り。ならば、と会員が採点に加わったとされる(社)日本建築構造技術者協会(JSCA)に聞いても「よく知らない」との回答。つまり「密室採点」なのだ。
試験内容が、選択式や答えが1つしかないようなレベルの記述式ならこれでも問題は無い。しかしほとんどが、解釈によって回答が異なるような論述式。これでは「主観で採点してないか」「有資格者を優遇してないか」と疑念が渦巻くのも無理はない。
また、“合計で60点”だったとすれば、有資格者は極めて優遇されていたことになるし、「午後の部は木造建築や微分など、構造設計者にとって本当に必要な問題か」と、試験を受けた建築士が疑問を持つのも無理はない。採点基準と方法をはっきりと公開し、皆が納得するような情報を提供することが必要だろう。 (つづく)
【大根田康介】
※当コラムは過去に情報誌『I・B』およびネットI・Bにて書いたものを集約し、加筆修正したものです。
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