コラム「迷走する建築士業界」
■経験工学が反映されず
そもそも認定プログラムという話は、15年ほど前に、一貫構造計算プログラムが比較的安い価格で販売されるようになってからの問題。以前の認定プログラムもそれなりの存在だったが、制度そのものにあいまいな点があり、使い勝手が良くなかった。
これまで大臣認定は、確認審査する側に見やすいかたちにするのが基本だった。ところが本来の使い方をせず、紙の厚さをかさ上げし、「これなら手間がかかるし大して詳しく審査しないだろう」という人間が出てきた。ここから偽装が始まったのだ。
ゆえに今回、偽装されにくいプログラムにしたはずなのだが、新しい認定プログラムで作ったものでは確認申請が1件しか通ってないという話も聞く。
この件について、JSCAの木原碩美会長は弊社インタビューに対し、「認定をとった後、プログラムにバグがあったようです。これもJSCAが以前から国交省に意見書を出していました。本来、構造計算プログラムを使って建物を設計するにしても、それを使う人の工学的判断をもって運用する部分があり、本来はそれをちゃんと構造計算書に反映させないといけないわけです。
ただ、新しい認定プログラムは、あまり工学的判断を必要としない簡単な建築物を認定範囲にしています。ですので、設計者の思想が入った建築設計には適応しにくい部分があります」と答えていた。つまり、ごく標準的な建物しか設計できないというわけだ。 (つづく)
【大根田康介】
※当コラムは過去に情報誌『I・B』およびネットI・Bにて書いたものを集約し、加筆修正したものです。
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