積水ハウス(株)は先日、既報の如く同社発祥の地にも等しい滋賀工場の閉鎖を発表した。
人員は他工場、営業本部への配転を図るという。
工場勤務の技術者は他工場へ配転になるだけでなく、カスタマーズセンターやリフォーム部門へ配置換えされることもありうるとのこと。技術者がこうした環境の変化に耐えうるか否か、不安視する向きもある。
こうした中で、九州営業本部の人事が発表された。
常務執行役員九州営業本部長兼積和建設九州(株)代表取締役社長の山田新一氏が、2009年1月1日付けで常務執行役員中部地区不動産販売担当、中部第一営業本部長、ランディック積和中部(株)代表取締役社長を兼務する形で転出した。
これを受けて九州営業本部長には福岡支店長の赤松大介氏が昇格した。
これらの人事に伴い、2月1日付で九州営業本部内の管理職の異動が発表される見込み。
赤松氏の後任の福岡支店長には、福岡支店営業担当次長の古後氏が昇格する。
なお、福岡支店は営業エリアを東地区、福岡市内地区、西地区の3エリアに分ける。
東地区の責任者には大分支店次長であった佐々木氏が、福岡市内地区の責任者には長年都市型住宅のイズ・シリーズ等を牽引してきた田井氏が着任し、西地区は支店長の古後氏自らが支店長兼務で担当することになる。
同時に、久留米支店は福岡支店へ統合されて福岡支店久留米事業部となり、吉岡氏が同地区の責任者を担当する。
久留米ハウス会(協力工事店会)は、福岡・熊本・佐賀等の各ハウス会へ地域別に吸収されることになる見込み。
現在、九州営業本部内では最も元気の良い佐賀支店の支店長・高山氏が退職する。
同氏は福岡支店および同支店から事業を分離する目的で設けられた九州綜建支店(低層集合住宅部門)の時代に、JAを中心とした金融・事業者層との間に密接な関係を築き、支店長の伊藤氏ともども、低迷していた九州営業本部の収益のかさ上げに貢献してきた功労者である。
佐賀支店長は高山氏の退職に伴い、北九州支店の笠(りゅう)氏が就任する見込みである(りゅう氏の姓の漢字が不明のため、推測により『笠』の表記で紹介した。誤字の場合は後日改めてご紹介させていただくとともに、お詫びをさせていただきたい)。
佐賀支店の川越次長は、北九州カスタマーズセンター長へ配転となる。
川越氏の後任には、鹿児島支店建築課長の大久保氏が就任する。
積和建設九州(株)の社長には、同社の坂口代表取締役専務が社長に昇格し、全九州を統括することになった。また、大分支店を北九州支店に統合することとし、北九州支店の高田支店長が北九州・大分の統括責任者となる。
同時に大分支店長であった高山氏は、積和建設九州(株)福岡支店長へ横滑りとなる。
北九州支店大分事業部長は森(光廣)氏が担当する。
積水ハウス(株)北九州シャーメゾン(木造住宅)支店を廃止することが決定したようである。
その他、積水ハウス鹿児島支店、宮崎支店の人事については依然として不明であるが、前任の山田九州営業本部長当時からの懸案である両支店の存続問題については、検討が続けられている。
鹿児島支店の場合、エリア内には中核となる鹿児島市以外にも、国分・加治木、川内地区、鹿屋(大隈半島)など、小規模都市が分散して存在している。また、宮崎支店の管轄地区も、宮崎市以外に県北の延岡・日向地区、県南の都城地区と、市場が分散している。
これらの地域ごとに展示場を配置するとなると、維持費の1,000万円プラス駐在員費用が、固定費として掛かることになる。
ところが、最近の鹿児島支店の出荷棟数は、月平均で4棟強である。とてもではないが、ここまで住宅市場が冷え込んでしまっては、支店の赤字を営業本部全体の収益によって賄いきれるものではない。
撤収を決断しようにも、過去数十年にわたって提供してきた顧客の持家へのメンテナンスに対する責任(道義上も含めて)がつきまとう。
住宅業界のトップメーカーとしての矜持の観点からも、アフターサービスをも含めた全面撤退というわけにはいかないのである。
今回の赤松氏を九州営業本部長にすえる人事で、一気に若返りと活性化、更にコストダウンを図ろうとしているが、今回の世界同時不況は、アメリカ、イギリス、スペイン、中国等、現在苦しんでいる各国の旺盛な住宅需要および過剰な建設投資の反動から生まれているのである。
逆を言えば、住宅メーカーがこの不況を脱する処方箋を描くことができれば、日本の立ち直りは早くなる。
そもそも工業化認定住宅は、大量生産方式を確立することによって国民に高品質で安価な住宅を供給することを目的としており、国家政策としてのバックアップがなされたことで、成長をみたはずである。しかし、高品質・低価格という本来の目的を逸脱し、高品質・最高価格帯住宅となってしまったことが、そもそもの誤りである。
それらの国家事業を、工業化認定住宅メーカーに代わって担ってきたのが、アイフルホームやユニバーサルホーム等の規格型住宅メーカーであった。
しかし、彼らの場合にも差別化イコールコストアップ化へつながり、さらにその下を潜りつつあるのが「タマホーム」、「レオハウス」、「昭和建設」等の『NAC』派生メーカーや、飯田産業グループ等のパワービルダーグループである。
九州営業本部の鹿児島・宮崎両地区の今後の展開に、どのような動きが見られるのか。都市開発およびマンション事業部の動きにも目が離せない。
ここ数年、戸建注文事業部門の低迷を救ってきたのが、元九州特建事業部長から副社長にまで登り詰めた吉満氏であり、その功績は大きい。
東京ミッドタウンや赤坂ガーデンシティ等の都市開発事業で、毎期数百億円もの収益をあげて下支えをしてきたが、各営業本部や支店の販売用不動産購入に関する決済は、全て彼を経由することになった。
しかし、今回の金融不況による不動産価格の急激な値下がりをうけ、積水ハウスも無借金経営から多額の有利子負債を抱え込む状況に至った。
一方で和田前社長(現会長)は『サスティナブル・タウン(評価価値が持続する街並み作り)』を標榜して土地購入をバックアップしてきた。
しかし、今回の金融恐慌に端を発する不動産価格の急落による、同社が所有する土地の評価損に関する責任は、もっぱら吉満副社長に負わせる心算ではないかという世間の噂もあり、4月の役員人事が注目される。
【徳島 盛】
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