歴史に残る就任演説だった。日本時間の21日、アメリカ合衆国の第44代大統領にバラク・オバマ氏が就任した。アメリカ史上初の黒人大統領というだけでなく、未曾有の経済危機を前に、明確な再生へのメッセージを発信し、アメリカ国民だけでなく世界に希望を与えた20分間の演説だった。
戦争、経済危機といったアメリカが抱える厳しい現実から説きおこし、自国の建国以来の苦難をコンコード(独立戦争)、ゲティスバーグ(南北戦争)、ノルマンディー(第2次大戦)、ケサン(ベトナム戦争)といった激戦地で表現した。
そのうえで、テロ、中東、経済といった諸問題に正面から向き合う姿勢を明確にしたうえで、「再生」は可能だ、今日からはじめようと訴えた。アメリカ国民には「新たな責任」という言葉で団結と参加を呼びかける。
固有名詞を出さずに、ケネディ元大統領やキング牧師を想起させる巧みさは見事である。
絶叫することもなく、美辞麗句を並べるでもない。しかし、力強いオバマ大統領の言葉は、この日がアメリカだけでなく、世界が変わる一歩だとの希望を与えた。
有名になった「Yes、We Can」は一度も使われなかった、しかし、演説を聴いたアメリカ国民をはじめ大多数の頭のなかには「Yes、We Can」が、より大きく響いていたに違いない。
漢字を読み間違い、発言が迷走するどこかの首相とは天と地の違いだ。言葉は世の中を変える力があることを、アメリカの大統領に教えられた日でもあった。
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