自民党における、国会議員の定数減や歳費削減の動きが明らかになってきた。麻生首相・総裁は18日の自民党大会で「衆参両院の選挙制度で、似通っている部分については見直しが必要だ」と述べ、党内での検討を指示した。これを受けて細田幹事長は20日、「身を削る努力が当然必要だ」と述べ、役員会で議員定数や歳費の削減を検討していくことを確認したと表明した。また来る総選挙のマニフェストにも盛り込んでいくことが確認された。
議員の定数や歳費の削減が突然浮上してきた背景には、国会議員自らが「身を削る」という姿勢を見せることで消費税増税の口実あるいは道筋にしたいという思惑がある。
だが、こうして「身を削る」ことが、本当に国会議員の身を削ることになるのか疑問だ。議員の歳費の削減と消費税問題は全く関係のないもので、むしろ民意を削る結果となろう。いまでさえ民意が国会に届いていない現実があるのに、定数を削減すると、声の大きい一部の意見だけが、なおさらに反映されてしまうことになる。
すでに引退を表明している小泉元首相は、衆参議院を廃止して、一院制にすることを提言しているが、これと軌を一にしている。さらには自民党内には、現行の比例代表制を廃止して単純小選挙区制にしたいという強い願望がある。そうなればますます少数意見は反映されなくなり、民意の切捨てにつながるものだ。そもそも日本は、ヨーロッパなどと比べても人口あたりの議員数は多くない。増税の口実として定数や歳費の削減を持ち出し、自党に有利な選挙制度に変えていく、というのが自民党の思惑だ。
【佐嘉 一郎】
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