【気になる本、ナナメ読み】 vol.7
先日、オバマ大統領の就任演説があった。連日のように報道されているから大づかみにはご存じの方も多いだろう。詳細はさておき、個人的にはこの演説にはオバマ大統領の「覚悟」が込められていたように思う。今回紹介する『人間の覚悟』を読んでいて、ふっとそんなことが頭をよぎった。
同書は、混沌とする経済を迎え、心が闇に包まれる人が増えた現代社会の状況をふまえて著されたのだろう。著者が若いころに体験した極限状態と、死を間近に控えた現在の心境とが論調の大きな柱となっており、自身が学んだ仏教が話に厚みを加えている。
著書のなかで、「統計や数字はあてにならない。自分の実感が大事」「人間は情動的に行動することが多い」といった意見がある。たしかに、昨今では「経済は人の心理によって動く」という研究もあり、「人の情」というものはすべての物事に通底する、本質もしくは真実の大きな一部分なのかもしれない。
著者がいうところの「覚悟」は「何に対するものか」と考えてみた。結局、月並みではあるが「とことん生き抜くこと」に対する覚悟なんだろうと思った。さて未曽有の不況に突入した日本のトップは、いつ、どのように「日本が生き抜く覚悟」を表明してくれるのだろうか。それとも、我々一般庶民には「もう国には頼らない」という「覚悟」が必要なのだろうか。
【大根田康介】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら