昨年の福岡市議会通過で、いったん決着がついたかと思われたこども病院人工島移転問題に、再び火がついた。
23日、読売新聞が朝刊のトップと社会面を使い、こども病院現地建て替えの工事費水増し問題を報じたことで、地元紙をはじめ他メディアも追随し、福岡市を揺るがす事態となっている。「なぜ今頃?」と、多くの関係者が困惑の色を隠せない。
この問題についてデータマックス取材班は昨年7月、人工島事業検証・検討作業に当たって、福岡市が東京のコンサルに業務委託して作らせた「福岡市立病院経営分析報告書」を情報公開請求で入手。患者家族らからの要望が多かった「現地建て替え」を否定することからはじめたという証でもある同報告書の「はじめに」という文章から、水増しの事実まで詳細に報じてきた。このほか、病院移転担当(保健福祉局)が業務委託して作成させた文書など、関連書類の全てを入手、問題点を明らかにしている。
一番の問題は、「白紙に戻して見直す」としたはずの吉田宏市長の言葉が嘘だったということに尽きる。現地建て替えを否定するシミュレーションの存在そのものに加え、同シミュレーションで85億5,000万円とはじき出された現地建て替え工事費を、検証・検討報告書では128億3,000万円と水増し。水増し分42億8千万円をローリング費用としていたが、スーパーゼネコン3社に再見積りを依頼し、「口頭で」約1.5倍の回答を得るという手法で水増ししていたことも明らかになっていた。ゼロからの検証・検討ではなく、人工島に誘導するための作業だったことは明らかだった。吉田市政は市民を騙したのである。
さらに、福岡市が起債協議のため総務省に提出した文書には、早い時期から移転候補地を「人工島」として、面積まで明記していたことも報じた。「移転候補地はまだ決めてない」としながら実は人工島で突っ走っていた証拠である。吉田市政の嘘をチェックすべき福岡市議会の良識ある声も、少数だったがためにかき消されてきた。
これまで沈黙を守ってきた読売新聞の突然の報道は、さまざまな憶測を呼んでいる。思わぬ方向に事態が進むと予想する向きもあるが、今回の報道で読売が吉田市政に見切りをつけたということは否定できない。市長は激怒しているともいわれるが、折り返しを過ぎ、公約違反しか見当たらない吉田市政に対し、多くのメディア、そして市民が「チェンジ」を望んでいることは明らか。いずれにしろ、吉田市長には、一連の疑惑に対する説明責任が改めて求められる。役人任せで逃げるようなら、いよいよリコールの動きが現実味を増す。
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