―堀江さんが事業を起こされた当時、若い人に独り立ちする力を与えていたと思います。また、色々な体験をされる中で、会社組織とはどのようにあるべきだと考えるようになりましたか。
堀江 まず、私は誰でも事業を起こせると思うし、それが普通の考え方だと思っているんですが、それを普通と見られない方に違和感を覚えますね。目的さえあれば、これからの働き方として、あえて会社という枠にとらわれず自分で事業を起こすのはアリだと思います。自分でやればリスクもリターンも自分に返ってきますから、やる気が出るんですよね。
「若いうちにリスクを被りたくない」ということで会社に入る人もいるでしょうが、実はそれこそがリスクです。他人の船に乗っていて沈没したら誰を恨めばいいのか、自分が船を運転した方がいいのか、という話とすごく似ているんですよね。
また、会社組織という観点でいえば、歴史をきちんと検証したわけではありませんが、織田信長とチンギスハンを比べてどうかという話に例えられるんではないでしょうか。チンギスハンはユーラシア大陸の大部分を統治した一方で、信長は志半ばで倒れた。2人の差は何かと考えたとき、結局は運みたいなところもあるのかなと思います。
人生の中で大仕事を成し遂げる上で、どうしてもスピードを求めないといけないし、古い道徳・倫理観を変えないといけない。その意味で、信長は新しいことをやったわけですよね。僧兵勢力と対抗するための寺院焼き討ちなんてことは、当時の道徳・倫理観からしたらありえなかった。楽市楽座や自由貿易といった、当時としては革新的な経済政策もしました。さらに、今でいう敵対的なM&Aみたいなものでしょうけど、色々な藩の大名を従えて天下統一に向かっていました。それでも、もともと信長の臣下ではなかった家臣の明智光秀に討たれました。ただ流れとしては、信長のやったこと自体は正解に近かったと思います。
自分に置き換えると、内部にいる人間のモラル管理とかそういうことはあんまり考えていませんでした。どちらかというと性善説でした。すごく嫉妬心があったことは分かるんだけれども、「そこまでやるのか」と思うことはたくさんありましたね。
でも、ある程度は目をつぶらないとスピードがでないし、どうすれば一番良かったのかは分かりません。「こうすれば良かったかな」と色々シミュレーションはしてみましたけど。ベストは尽くしたかなと思います。当時は様々な綻びもあったし、それに言及したこともありましたけど、そこで答えが返ってこなくても見逃してしまったこともたしかにありました。
【大根田康介】
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