こども病院人工島移転を含めて、吉田宏福岡市長の市政運営は破綻している。市長が問題を起こすたびに、苦しむのは市職員。職務に忠実になればなるほどマスコミや市民からの批判の矢面に立たされる。
吉田市長の2年間、目玉だった選挙公約で守られたものは皆無。むしろ「公約違反」「変節」と言われることのほうが多い。留守家庭子ども会無料化、市立保育所民営化中止、これらはなんらなすすべなく、断念に追い込まれた。何もかも役人任せで、自身が関係者に理解を求めて走り回ることなど1度もなかった。
「新空港はいらないと明言する」とまで断定した空港問題は、知事に下駄を預け、だんまりを決め込む。政治家としては卑怯というほかない。
最大の関心事であった人工島事業の見直しは、外部の人間を一切入れず、市職員だけで「検証・検討」というアリバイを作らせた。結果、事業推進に舵を切り、統合移転が決まっていた市立病院のうち、こども病院だけを人工島に移転すると言い出した。子どもの命など一顧だにしない姿勢には市民の批判が高まる。
拠り所とした「検証・検討」がインチキだったことは、データマックス取材班が情報公開請求して入手した関連文書や(過去記事参照)、本日報じた「検証される側(保健福祉局市立病院担当)と検証する側(検証・検討チーム)」が、共同して現地建て替えの否定に動いた事実を見ても明らか。
この混乱は誰が招いたのだろう。もちろん、自身の公約達成を市職員に任せ、関係者とひざ詰めで語ることから逃げ続けてきた市長に他ならない。特にこども病院問題では、一般職員に責任を負わせるようなことがあってはならない。ゼネコンの見積り問題を含め、職員は与えられた職責を懸命に果たしたに過ぎない。責任は、なんの定見もなく、場当たり的に検証・検討を行なうような方針を示した市長にある。
加えて、市長は平気で「ゼネコンに行った2名の職員」などと口走る。マスコミに事情を聞かれる担当職員は、話したくても話せない状況に追い込まれ、1人苦しむことになる。
今回、ゼネコンへ現地建て替え工事費の見積りを頼んだ問題で、新病院担当職員が関与したことを報じたのは、検証・検討チームの1職員に全てを負わせる危険性を強く感じたからである。検証作業の信頼性を失うことを承知で、事実関係を認めた市職員には、心から拍手を送りたい。建設工事費について疑問があれば、建築局畑の専門家に聞けばよかったことであり、この際、「場当たり的な言い訳」はやめたほうがよいということも申し上げておきたい。この問題には、まだ新事実があるからだ。
吉田市長に政治家として、そしてまた福岡市のトップとしての良心があるのなら、こども病院問題を白紙に戻すことを望みたい。
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