人工島事業の「検証・検討」に大きな疑義が生じた。「検証・検討」の対象は人工島事業と市立病院事業。両事業の所管局は港湾局と保健福祉局になる。検証・検討作業の所管局は総務企画局であるが、単一の課が作業にあたったのではなく、職員を招集しチームを作っていた。当然、検証される側の保健福祉局や港湾局の人間はチームに入るはずがない。
市役所職員だけの検証・検討には、スタート時点から「お手盛り」の批判が多かった。そこに検証される側の職員が検証作業そのものに加わってしまえば、お手盛りでは済まない。これまでの仕事の補強と言われても仕方がなくなるうえ、守りたかったのは「人工島への移転」と指摘されるのは当然である。
検証・検討作業に保健福祉局の新病院担当職員が手を貸していたことが判明した。もちろん所属長らが知らなかったはずがない。こうした疑義を待たれるような「検証・検討」を、組織的に行なっていたとするなら、吉田宏市長が「軸にする」といい続けてきた「検証・検討結果」自体が信頼できないものだったことになる。
こども病院の人工島移転だけでなく、人工島事業そのものを推進するとした市長判断も怪しいものになった。「見直した」というアリバイ作りのための「検証・検討」だったのなら、市長は大変なことをしたものだ。市民を騙したばかりか、市職員まで巻き込んで市政に汚点を残したことになる。責任は吉田市長にある。しかしその市長は、新事実が明らかになったにもかかわらず、自ら説明しようとする気配すら見せない。毎週火曜日は定例記者会見だが、来週は韓国への出張とかで、早々に説明の機会をつぶしている。出張日程を延ばしたのではないかとまで囁かれる始末。そういえば、こども病院の市民説明会の折も、東京出張で不在。何か問題が起きるたびに「出張」が入るのは、吉田市長の特色でもある。こんなトップに付き合わされる市職員も気の毒であるが、一番の不幸は市民である。
市役所がこれ以上混迷を続ければ、市民の信頼は益々失われていく。守られるべきは市長のメンツでもなければ、人工島でもない。行政と市民との信頼なのだ。
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