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視点欠く市立病院問題(福岡)
行政
2009年1月 1日 09:30

 この1年、こども病院人工島移転に多くの視線が向けられてきた。「こども病院人工島移転の是非を問う住民投票条例案」の否決で、全てが終わったかのように思いがちだが決してそうではない。同病院の今後には、これからまだ様々な難関が待ち受けている。

 福岡市が新病院で予定するベッド増床の困難、巨額な公費投入が予定される都市高速延伸、病院PFIの成否、何よりも急激に悪化する経済状況・・・。どれをとってもこども病院人工島移転の阻害要因ばかりである。一番の問題は、役人任せの無責任な市政運営を行なっている吉田宏市長の存在だろう。

 もうひとつ、見落としてはならない重要な問題がある。現在、福岡市立の病院は「市民病院」と「こども病院・感染症センター」のふたつである。市の計画案では、新たに「独立行政法人」を作り、ふたつの病院を運営させるという。しかし、本当に順調な経営ができるのかどうか疑問視する関係者は少なくない。ふたつの市立病院は福岡市の不採算部門であり、毎年、一般会計から病院事業会計に繰り入れを行っているのである。分かりやすく言えば、赤字の病院を税金で支えているということ。もちろん、民間ではできない分野であるからこそ、議会や市民は容認してきた。08年度の決算ベースで見れば、「こども病院・感染症センター」への福岡市からの繰り入れ金額は約5億円。「市民病院」へは8億円を超えている。つまり、合計13億円もの税金投入を受けている状態なのだ。

 新こども病院の開院が予定される13年度からは、こども病院に対する繰り入れ金額だけで17億円になるとされるが、市民病院の赤字分を加えると25億円にも及ぶことになる。経営状況次第でどうなるか分からないといった不安もつきまとう。こども病院の収支にばかり目がいきがちだが、ふたつの病院を経営するという観点から、新たに立ち上げる「独立行政法人」を検証しなければならない。残念ながら市民病院の方はこれまで以上の経営改善を望める状態ではない。大きな市民負担が待っていることには変わりがない。

 本来、こども病院の機能は福岡市が単独で運営するには大き過ぎるものである。福岡県内だけでなく、西日本の広いエリアからの患者を受け入れている以上、広域病院としての性格が強い。なぜ県や国に応分の負担を求めなかったのか、極めて疑問である。また、そうした議論や市民への問いかけがなされなかったことは、怠慢以外のなにものでもない。

 目先のことが騒がれるばかりで、議会もマスコミも視点を欠いた議論しかしてこなかったのではないか。自戒を込めて言うなら、もう一度ありのままの情報を開示して、市民の意見を十分に汲み上げるべきである。「破綻しました」では済まない問題だけに、議論の積み重ねが必要なのだ。無くしてはいけない病院だからこそ、難関を乗り切るための市民の協力が必要なはずである。

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