自民党・渡辺喜美元行革担当相が離党に向けて前のめりになっている。定額給付金の撤回や衆院の早期解散などを麻生首相に提言、受け入れられなければ「離党」と、退路を断っての行動である。7日には党籍を確認する誓約書について、署名する意思が無いことを表明したとも報じられている。
後戻りのできないところまできてしまったようだ。
渡辺元行革担当相は、故・渡辺美智雄元自民党副総裁の子息である。美智雄氏は、歯に衣着せぬ発言と行動力、栃木弁丸出しの語り口で人気を集め「ミッチー」の愛称で親しまれた。40日抗争で中曽根派を飛び出す頃から力をつけ、派閥横断の「温知会」を主宰した。中曽根派に復帰してから、さらに実力者としての地歩を固め、2度の総裁選に出馬する。
総理・総裁の座に就くことなく終わると思われた94年、細川内閣の退陣という突発事件が起きる。小沢一郎氏(現・民主党代表)から後継首相を打診されるが、その条件は自民離党。揺れ動いた末に自民党に留まったが、翌年病没する。
渡辺喜美元行革担当相は、秘書として美智雄氏の側にあり、全てを見届けている。権力闘争の実態とその怖さを実体験していることになる。その喜美氏が、自民党離党という賭けに打って出た以上、勝算があってのことだろう。
因縁を感じるのは、野党のトップが、故・美智雄氏の時も喜美氏の場合も小沢一郎氏であるということ。自民党を離れた渡辺元行革相が手を組む相手は、どういう形であれ小沢氏になる。亡父の二の舞を演じることはあるまいが、渡辺元行革相の突出ぶりは気になるところである。小沢民主党と、どこまで連携をとっているか判然としないが、起爆剤になる可能性は十分である。もちろん、美智雄氏のように志半ばで動きを封じられるということもありうる。
渡辺元行革相が離党してまで目指すものが何か、まだ見えてこない。倒閣に持ち込みシャッポを変えるためなのか、あるいは政界再編の布石か―。いずれにしろ、中川秀直元自民党幹事長ら反麻生陣営の動きと連動するようなら一気に政局が流動化する。当分、渡辺元行革相から目が離せない。