西松建設の裏金問題で元副社長らが東京地検特捜部に逮捕された。裏金の使途が捜査の焦点となるが、注目されるのが同社OBを代表者としていたふたつの政治団体である。
「新政治問題研究会」「未来産業研究会」(ともに2006年に解散)の名前で総務省に届け出されていたが、ふたつの団体の住所は、千代田区平河町のマンションの一室。収入は会員からの会費と政治資金パーティに依存しているが、極めて不自然である。06年、「新政治問題研究会」は391人の会員から会費3,085万8,320円を集めている。3回開いたとする政治資金パーティの収入は総額530万円。2,500万円前後を政治家の政治資金パーティや政治団体への寄附として費消していた。同研究会の政治資金パーティは「九段会館」で開かれたことになっているが、会場費として5万円以上の記載はない。安上がりのパーティだったということか―。
「未来産業研究会」は79人から588万円の会費収入、3回の政治資金パーティで570万円を集めたことになっている。政治家の政治資金パーティや政治団体への寄附が支出の大半を占めるのは同じである。政治資金パーティの会場費(会場は東京グリーンパレス)は3回とも6万9,300円となっている。やはり経費格安の「政治資金パーティ」である。
これらの寄付金や政治資金パーティは、実態がなく、収入のほとんどが実は裏金だったとの話も報じられている。つまり虚偽記載ということ。これでは、政治団体そのものがインチキ団体だったと言われても仕方がない。ゼネコンのOBが政治団体を作ること自体、うさんくさいと言わねばならない。
福岡にも不可思議な政治団体
業界関係者が政治団体を作っているのは前述の2例にとどまらない。弊社ネットI・B ニュースで連載中の「積水・大和 巨額政治資金提供の闇」に詳述しているが、大手住宅メーカーらで組織された「住宅産業振興連盟」などもそのひとつ。同連盟の会費収入が主たる収入なのだが、なぜか年によって会員数が大幅に変わることが明らかになっている。
実は、福岡県内にも建設業関係者が代表、会計責任者となっている政治団体が存在する。得体の知れない団体で、その収入、支出には極めて不可解な部分が多い(今後、詳細を報じていく予定である)。業界や企業が政治団体を隠れ蓑に不正を行なっているとすれば、政治団体制度を根本的に見直す必要があるだろう。また、政治資金パーティの在り方も再検討するする必要がありそうだ。「控え室でパーティをやった(上野公成元官房副長官側が1日2回のパーティについて聞かれての答え)」などという、非常識な話がまかり通るようでは、政治資金規正法の欠陥は、いつまでたっても是正されない。
政治団体の届け出は、じつに簡単である。規約と代表者、会計責任者などを記載し、選挙管理委員会に提出すればそれでOK。それだけに悪用もしやすい。今後の西松建設の捜査に注目したい。