◆「政界再編」は幻想
自民党の反主流派が唱える政界再編論も生き残りの方便にすぎない。
反麻生の旗頭である中川氏は、昨年来、民主党の反小沢グループと接触し、自民、民主ともに分裂させる形の政界再編を模索してきた。しかし、そのカウンターパートと見られている民主党有力議員はこう言い切る。
「政界再編論に乗ることは自民党の延命に手を貸すだけだ。全く考えていない。自公が郵政選挙で衆院の3分の2の勢力を得た後、どんなに強引な政治を行なったか、われわれはあの屈辱を忘れない。民主党には左派も保守もいるが、民主党政権をつくって政策のねじれは時間をかけて淘汰していく。民主党がギリギリ過半数に届かないとき、自民党から引き抜くことはあるかもしれないが、それは政界再編といえるほどのものではない。」
同じ自民党の再編論者でも、加藤紘一氏や山崎拓氏は、小沢氏や菅直人・代表代行ら民主党中枢に接近してきたが、その小沢氏も、「加藤、山崎で1.5人じゃないか」と、大きな勢力につながる動きではないと見切った言い方をしている。
自民党の“2つの乱”が不発に終わったのも、反麻生派には民主党の分裂を誘うという再編の展望が描けないため、動くに動けないからだ。
◆「麻生政権はもう持たない。4月総選挙だ」
小沢代表は民主党内にそう檄を飛ばし続けている。しかし、国会戦術を見ると、表向き2次補正の「2兆円の定額給付金」や本予算の「消費税増税」に反対しているものの、本気で麻生政権を追い詰めようとしているようには見えない。
2次補正予算の審議でも、参院でいったん採決に応じる姿勢を見せながら、自民党から期待していたような造反が出そうにないとわかると一転して抵抗するなどチグハグな対応だ。
国民新党幹部は、民主党の腰が定まっていないと指摘する。
「自民分裂を仕掛けて政権崩壊を早めるにしても、話し合い解散を持ちかけるにしても、民主党は最初から予算審議に徹底抗戦の構えをみせて緊張感を高めるべきだった。予算成立を大幅に遅らせれば、麻生政権は絶体絶命の危機に陥って分裂や解散を早めることができたかもしれない。しかし、民主党は景気対策を遅らせたと批判をあびることを恐れて中途半端に審議を進めてきたから自民党を妙に結束させてしまった」
民主党にとって解散を仕掛けるには4月までが最大のチャンスだ。しかし、このまま自民党からのまとまった造反が期待できずに、2兆円給付金や本予算の関連法案が成立すれば、4月以降、国会ではソマリアへの自衛隊派遣法案など今度は逆に野党の足並みの乱れが予想される法案しか残っていない。
「政権を取れば責任の重さが違う。消費税ひとつとっても今までのように反対ばかりというわけにはいかない。われわれは非常に緊張している。ここまで来たら政局ありきで何が何でも解散に追い込むのではなく、任期満了選挙でもかまわない。」
民主党政権ができれば大臣か副大臣就任が有力視される民主党有力議員は足がすくんでいるようにも見える。