「コリンシアンパートナーズ」がいよいよ事件化しそうである。
2006年10月にグッドウィル・グループ(GWG、08年10月ラディアホールディングスに商号変更)が人材派遣最大手クリスタルを買収する際に舞台となったのがコリンシアンパートナーズという投資ファンド。
コリンシアンパートナーズが運営するコリンシアンファンドにはGWGが組成した投資ファンドが883億円(約75%)、他の投資家が303億円(約25%)を出資した。その資金でクリスタルを買収したが、クリスタルのオーナーに渡った買収資金は500億円。差額の680億円は「他の投資家」の手に渡った。出資分を差し引くと383億円の儲け。濡れ手に粟の巨利を手にした。
383億円はどこへ消えたのか。この投資ファンドに群がった投資家グループ、そして投資ファンドに出資した闇の勢力に捜査のメスが入ろうとしている。
国税がまず切り込む
深い闇がつきまとう、GWGによるクリスタルの買収劇に、まず切り込んだのが東京国税局。08年7月23日の新聞各紙は、GWGがクリスタルの買収を巡り、東京国税局から約10億円の所得隠しを指摘されていたと報じた。クリスタルのオーナーに支払った「退職慰労金」のうち約10億円について、創業者への「口止め料」で、経費とは認められないと判断されたという。
クリスタルのオーナー、林純一氏が、売却の際につけた条件が「同業者には売らないこと」。GWGは、クリスタルのオーナーに分からないように、2つの投資ファンドを使ってクリスタルを買収した。同業者のGWGが真の買収者だと知った林オーナーは激怒。それを鎮めるために、GWGは07年に林オーナーに「退職慰労金」名目で約30億円を支払うことで和解。東京国税局は約30億円は退職慰労金としては高額過ぎ、うち約10億円は林オーナーへの口止め料であると判断した。
正々堂々としたM&Aであれば、口止め料を払う必要はない。退職慰労金名目で、口止め料を支払ったことは、GWGの折口雅博・前会長(47)自身が、クリスタル買収に疚しさを感じていたからだ。GWGの所得隠しは、国税がまず「口止め料」を突破口に、クリスタル買収の不透明な資金の流れに切り込んだことを意味している。
続いて、08年10月17日、日本経済新聞は、買収に関与した公認会計士が脱税した疑いが強まったとし、東京国税局が所得税法違反(脱税)容疑で強制捜査(査察)に乗り出したと報じた。(つづく)
【日下淳】
*記事へのご意見はこちら