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特別取材

過疎の町に24時間営業の巨大不夜城 討ち死に覚悟で天職を全う(下)
特別取材
2009年2月 9日 11:00

■過去でも未来でもなく 今のことを考えなさい

 ―今後の出店予定について教えてください。
 牧尾 曽於郡大崎町と宮崎県高原町に計画があります。大崎町は土地の取得まで終わっているので、環境が整い次第実現する予定です。

 ―過疎化は鹿児島県だけの問題ではなくなっています。県外から出店依頼があったらどうされますか。
 牧尾 その時僕は生きていないでしょう(笑)。ただし、全国に広まってほしいとは思っています。この業態の店はまだ他の地区にはない。不便で困っている人がいます。私は何でもオープンにしているので、やりたい人がいれば是非やってもらいたい。

 ―後継者はどのように考えておられますか。
 牧尾 政治の世界を見ても、世襲制が弊害となっていることは明らかです。例えば、係累だからという理由で入社させれば、明らかに他の社員の業務に支障をきたします。本当にやりたければ社員にお願いして、一社員として入社してくるでしょう。生え抜きで社長候補がいるわけでもない。僕が死ねば誰かがやるでしょう。

 ―小売業として、車販売と車検についての成功は異例です。車業界でのご経験が活かされているのでは。
 牧尾 私は永年、自動車に関連する業界に在籍しておりましたので、「何か秘密があるのではないか」と思われるかもしれません。しかし、これもお客様の要望によるものでしかない。
 高齢者から巡回バスを期待する声がありました。聞いてみると、病院とA-Zを訪れることが多い。そこで採算を考えずに片道100円で始めたのです。するとお客様から「あまり気の毒なので、自動車も売ってくれないか」という声が出始めた。車ではなく、お店に来店していただくための足を販売しようと考えたのです。
 当初は外部の業者さんに販売をお願いしていましたが、自社で販売するようになって飛躍的に販売が伸びました(年間3,500台)。やはり、何か考え方が違ったのかもしれません。あえていえば、セルフ販売で雑貨値入(諸経費を含めた総額表示)をしていること、ガソリンを満タンにしていること、マットや泥除けなどの付属品を付けていること、ぐらいでしょうか。
 車検も当初は提携業者にお願いしていました。そのうち、「なんでA-Zで車を買ったのにA-Zで車検をしないんだ」という声を頂くようになりました。最初は社員の大反対に遭いましが、それなら責任を持ってやろうと自社ではじめました。通常なら車検に出すと最低でも1、2日かかるところを、当社は「お客様が買い物をしている間に完了する」というスピードの速さでお応えしています。昨年は8,000台近く実績をあげました。

 ―今後の課題を挙げるとすると何でしょう。
 牧尾 当面の大きな課題があるとは思っていません。ただし、小さな課題は日々現場で発生しているはずです。それは現場の問題なので、お客様との向き合いの中でそれぞれが解決していくしかない。「過去のことも未来のことも考えるな、今のことを考えなさい」と社員には言っています。

 ―景気回復の展望が見えてきません。雇用についてはどう考えておられますか。
 牧尾 当社の場合は、景気が良くても悪くてもあまり影響を受けることがありません。昨年9月からはむしろ売上げは上昇傾向です。かと言って、将来どうなるかは誰にもわからない。経営者として、望んで当社に入社してくれた人々の雇用は絶対守らなければなりません。今後、さらなる激変が世の中に起きた場合、最後は農業に取り組んでみようか、と思っています。生産には膨大な人的エネルギーが必要です。当社はすでに農業法人を立ち上げて取り組んでいますので、こちらにも力をいれていくことになるでしょう。

【鹿島】

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