ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

【経済小説 連載第4回】飽くなき権力への執念/野口孫子 著
経済小説
2009年2月 9日 09:28

第2章  社長就任(1)

 坂本は思惑通り、名実ともに社長になることが確定したことに満足していた。一方、坂本を自分の後継者に指名したことに対する反響が、予想外に悪いことに驚いた中井は、危惧の念を持つとともに、責任を感じてもいた。社長にとって、会社経営は大きな仕事ではあるが、次代の後継者を養成し、指名することが一番重要な役目であることはわかっていた。もし、後継者の選定を間違えば、営々と築いてきた山水建設の未来には、暗雲が立ち込めることとなろう。
 自分の後継者に一番ふさわしいと判断した坂本が、黒い噂にまみれていようとは!
 調査しても、確証は取れない。社外の機関に依頼すれば、もう少し詳しい事実がわかるだろう。が、中井としては、そんなことはあり得ない! との思いを、心の片隅からぬぐい去ることができなかったのである。
 そうしたことを思い巡らすうちに時が過ぎ、坂本が仕掛けた策略に、はめこまれてしまうことになる。夜の道端で新聞記者の取材を受け、スクープされてしまったのだ。
 ここに至ってはどうすることもできず、否定のしようもない中井であった。
 「わしの眼の黒いうちは、絶対に悪いことはさせん」と、坂本に次期社長を託すことを、事実上認めるよりほか、なかったのである。
 坂本は、新人社員から営業本部長時代までのおよそ25年間を、名古屋地区で勤務した。
 坂本の名古屋時代の子飼いたちは、この朗報に小躍りして喜んだ。わが大将は、必ず自分たちを引き上げてくれるだろうという期待からだった。
 坂本は社長就任に向け、組織・人事を構想する作業に入った。
 社長就任がはっきりした途端、坂本はなにごとにおいても、中井に相談することなく事を進めるようになった。
 営業関係については坂本の一存が通った。しかしながら、本社、工場関係については、さすがに中井の意向を聞かざるを得なかった。
 このときからすでに、坂本と中井の間に、確執の芽が頭をもたげていたのである。
 坂本はまず、自分に対し敵対的立場に立つ人物を、排除することにした。自分の地位をおびやかす恐れのある人物、自分について悪い噂を流している人物、東京を中心に存在する渡部元会長一派と思われる人物、などがそれである。
 坂本の対抗馬で、人望の厚い吉川専務をいかに処遇するかについては、頭を悩ました。
 中井は、吉川を副社長に昇格させることを主張。坂本は、吉川を社に温存すれば、自分の地位がいずれ危なくなることが本能的にわかるのであろう。「自分の先輩だから、仕事がしにくい」と言って譲らず、子会社の清和不動産の社長として放出することにした。

(この物語はフィクションであり、事実に基づくものではありません)


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル