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<書評>水野和夫著「金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉」
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2009年2月16日 09:48

【気になる本、ナナメ読み】 vol.10

 政府が発表した2008年10月~12月期の実質GDPが前期比年率で10%を超えるマイナスとなり、第一次オイルショック以来の大幅な落ち込みとなった。これが新たな「失われた10年」の始まりとなるのだろうか。

 本書はサブプライムローン問題を中心に、大まかに言えば(1)今回の世界金融危機が起こった流れと(2)今後の日本がとるべき方策について論じている。

 (1)については、リーマンショックまでが第1段階、ウォール街から投資銀行が消えたのが第2段階、そして実体経済への影響の拡大が第3段階と規定。資本主義の成立以来、400年間続いた資本と国家と国家の三位一体の関係が崩れたのが、サブプライムローン問題が持つ歴史的な役割だとする。

 これまでグローバル経済を仕切ってきた「アメリカ金融帝国」終焉後の世界は、一体どうなるのか。ドル基軸体制は終わり、G7の終焉と無極化への流れは鮮明で、EUやBRICs、中東などがすでに金融経済から実物経済への流れを見越して動いている。その中でも、日本がいちばん出遅れているのではないかという。

 そこで問われるのが(2)である。「アメリカ投資銀行株式会社」と表裏一体の「日本輸出株式会社」は、「日本新興国向け企業株式会社」として進むべき道を模索する必要があるとする。具体的には、国を挙げての中小企業の海外(新興国)進出支援、および円高・ドル安政策や食料自給率の向上、産業構造の転換などがあるとする。

 ただ個人的には、こうしたことは内需拡大を念頭に同時並行的に行なうことが大切だと思う。やはり日本の国内経済が元気にならなければ、海外に進出したとしても競争を生き抜く企業体力が(とくに中小企業には)ついているとは思えないからだ。

 アメリカでは「金融大崩壊」だろうが、日本では「政治大崩壊」である。まずはこの状況を打破しない限り、日本経済の回復はとても望めないだろう。

【大根田康介】

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