ドンギルラバーベルトジャパンのソル社長は10年、20年ももつ製品を作る必要はないという。例えば1、2年しか持たない機械に10年もつ製品を入れても意味がないと考える。1、2年しかもたないならば、耐久性についてもそれに合わせた製品を安く提供したほうが利用する方としてはありがたいのではないかと考えた。「今までは、お客様の要求を100%とするならば、120%のものを納入しなければなりませんでした。しかし、これからの時代は発想を転換する必要があります。100%の希望に対しては、100%のものを安く提供する時代だと思っています」。
同社の製品は日本法人を設立する前から日本の代理店を通じて販売がなされていた。が、それでもまだ同社の製品は、日本市場に十分に浸透していない。更に、昨年の世界的金融危機の発生以降は、苦戦を強いられている。だが、同社は、ゴムベルト事業以外の分野において、新たな活路を見出そうとしている。それは地下鉄などの電車とホームの間に設置する櫛状のゴム板の販売である。同製品は車両とホームが接触しても車両に影響を及ぼさない品質をもつ。
現在、過去に2度の転落事故が起きた沖縄都市モノレールの、曲線を描くようなかたちにカーブしたホームをもつ5駅に設置し、隙間から人が転落する事故を防いでいる。「韓国ではほとんどの地下鉄で、このゴム板が使用されています。おかげで、転落事故はほとんど起こりません。このゴム板を日本全国の鉄道や地下鉄に納入したい」とソル社長は意気込みを語る。このゴム板については、国土交通省のメルマガ「運輸安全」でも取り上げられており、政府も一目置いているようだ。まさに縁の下の力持ち的な存在であるが、韓国企業が作る転落防止ゴムがより一層の安全を提供してくれる時代は、すぐそこにまで来ている。
【矢野寛之】
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