こども病院で懲りたと思っていたが、博多港国際ターミナルの指定管理者選定疑惑で、市議会がまた同じ過ちを繰り返そうとしている。
こども病院人工島移転をめぐり、同病院の現地建て替え費用水増し問題をはじめとする疑惑が再燃した。福岡市議会の良識ある議員から「やはりおかしい。特別委員会を作って徹底究明すべきだ」との声が上がったという。しかし、そうした声は議会の開催日が近づくにつれ、少数派になってしまう。誰かが「やめておこう」と言うからに他ならない。
議会で議決されたものをひっくり返すのは極めて困難だ。ただでさえ謝ることを嫌い、非を認めないという特質を持つ役人が、議会での決定を盾に頑強に抵抗するからだ。こども病院問題はその典型である。工事費水増し問題をはじめとする疑惑の数々は、昨年7月、データマックスや地元テレビ局が集中的に問題提起をした。その当時、他のメディアや議会が機能していれば、今日の混乱は無かったはずである。それでも問題が大きくなった以上、市議会は反省の上に立って、本来の市政のチェックという職務を遂行すべきである。できないのなら、職を辞すべきだ。
博多港国際ターミナルの指定管理者選定をめぐっては、担当の市港湾局部長と選定委員の1人が、JR九州の社長であり、指定管理者に名乗りを上げた「JR九州高速船株式会社」の取締役でもある石原進氏を囲む「すすむ会」のメンバーだったことが判明している。さらに、問題の部長はJR九州の専務と「親しい仲」であるうえ、別の選定委員と同専務も知り合いであるという。これだけでも不適切選定としてやり直しを命ずるべき問題であろう。
選定そのものにも疑問符が付けられた。5人の選定委員のうち、3人が博多港開発を支持しながら結果はJR系のJVが指定管理者候補に選ばれてしまったのである。JR系JVに対し極端に高い採点をした2人の選定委員がいたからだ。その2人こそ、「すすむ会」のメンバーであり、JR九州専務の知り合いであることが分かっている。これでもおかしくないというのだろうか。
当初、市議会の中からも「おかしい」との声が上がった。しかし、その声は日に日に小さくなる。
何者かの力が働いたからに他ならない。こども病院問題の時と同じく、議会人の多くが本来果たすべき使命を放棄してしまっているのではないか。
この問題は、3セクの博多港開発がいいか、民間のJRがいいかという次元の問題ではない。本来、公正・公平であるべき指定管理者選定の原則が守られていないのである。議会がまともに機能しているのであれば、きちんと検証に参加すべきである。
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