17日、朝日新聞朝刊に、竹中平蔵・元郵政民営化担当大臣へのインタビュー記事が掲載された。小泉元首相による麻生首相批判発言を解説する内容だが、かんぽの宿の売却問題にふれ、「損失を出している会社をあなたは買いますかということ。1万円でも売れればいい」として日本郵政を擁護している。
郵政民営化を担当した大臣として、民営化に難くせをつけた麻生首相を牽制する気持ちは分からないでもない。しかし、かんぽの宿などの保有不動産を、オリックスへ一括売却することに決めた入札経過は、誰が見ても不透明、不適切である。さらに何億もかけて建てられた「かんぽの宿」が1万円で売却されたことについて、「1万円でも売れればいい」とは国民をバカにした言い草である。この人には庶民感覚というものが欠けているのだろう。
土地や建物の実勢価格と赤字の額を詳細に見れば、問題となったかんぽの宿が1万円であるはずがないことは一目瞭然。公金で作られた施設を利用して、一部の業者だけが大金をせしめたことについても非難されるのは当然だろう。常識はずれの公有財産叩き売りであるにもかかわらず、民間となった日本郵政は情報公開に応じることはない。国(総務省)の報告書提出を拒むほどなのだ。情報公開の扉を閉ざしたことでも、民営化は「失敗」と言っておきたい。
経済状況は悪化の一途である。16日には内閣府の発表で、GDPが35年ぶりの大幅マイナスになることが明らかとなった。こんな時に「郵政民営化」がどうのこうのと言われても白けるばかりである。ましてや「1万円でも売れればいい」などという発言は、世間知らずの金満家の言い草である。小泉元首相や中川秀直元幹事長など郵政民営化推進の面々が同じ考えだとするなら、とんでもない連中ということになる。
郵政が民営化されたことで「良かった」「日本が変わった」「改革が進んだ」と実感している国民は少ないだろう。大騒ぎした挙げ句、日本経済は泥舟状態になっている。「改革、改革」と叫んだ結果が今の日本であることに反省はないのか。国民の目先を変えたいのだろうが、もういい加減、郵政を政局に使うことは止めていただきたい。