マンションデベロッパーの苦悩は値引きだけではない。デベロッパーの中には、金融機関からの融資が得られないため、次の物件の仕込ができていないところも少なくない。そのため、現時点はこれまでの在庫を販売して会社を運営していけばよいが、それが完売してしまうとすることがない、つまり開店休業の状況となってしまい兼ねないのである。そうすると生き残る道は、同業者の販売代理を行なうか、新たに「金主」を見つけるか、もしくはこれまでとは違った事業をやっていくかのどれかになるだろう。既に現時点でも、マンション販売をやりながら、戸建住宅の販売をスタートさせたところもある。確かに戸建に関してはマンションほどの、急激な販売の落ち込みは今のところないため、そこにチャンスを見出したのかもしれない。しかし、戸建専門業者は、「戸建は1つ1つに非常に手間がかかりますし、マンションみたいに一挙に利益が出せる商売ではありません。それにクレームも少なくはないです。その辺りは、マンション業者さんは戸惑うかもしれませんね」と指摘する。
いずれにしても、売れにくくなった市況の中で、頑張ってマンションを完売しても、余韻に浸る余裕は今のマンション業界にはないようだ。マンションデベロッパーの苦労は続く。
【宮野 秀夫】
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