昨年10月1日、国民生活金融公庫(国金)をはじめとする政府系金融機関4団体を統合して、新たに株式会社「日本政策金融公庫」(JFC)がスタートした。世界的な金融経済危機が進行するなか、中小企業や個人を含む商工業者からの期待も大きいが、旧国金の体質か否か、融資審査を巡る不可解な“事件”がある。
さる2月16日、大阪・淀川区のJFC十三支店の支店長宛に1通の内容証明が届けられた。差出人は1月26日に同支店に融資申し込みをした同区内の福祉用具製造販売M社のM社長。『通知書』と記されたそれには、「面談に感情的な激しい口調で警察が犯人者を調べる時の様な憎しみを込めて対応』(原文のママ。以下同じ)、「他の金融機関、保証協会も有るのに申込みしないで迷惑な融資申込みだ」「販売先及び計画書は何時ポシャル可能性があるため信用出来ない」などという融資担当者の言動を引用した疑問点を列挙、回答を求めたものだ。
JFCは先の国金に農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行が一体化された株式会社とはいえ、株式の100%を政府が保有して「民業補完」する公的な金融機関であることに変わりはない。資本金2兆2,380億円、全国152支店、従業員数8,100人の組織として、国民生活、農林水産、中小企業、国際協力の4事業を支援している。
このうち国民生活事業は、通称「こっきん」として知られた旧国民生活金融公庫が母体。小規模事業者にはもっとも身近な存在として、各地の支店への融資申込みが急増している。そんな折りでの窓口における担当者の不審な対応への疑問、怒りを込めたM氏の質問状である。『通知書』の最後には、告訴も辞さない旨も記されているから穏やかではない。いったい何があったのか。
M氏が最初に十三支店を訪ねたのは1月21日。相談窓口の人に会社の概要、事業を説明すると『申込みされるといいでしょう』と好意的な対応だったという。そこで必要書類と参考資料も添付して申請したのが1月26日。融資担当者による面談が2月4日だった。
「ところが担当者は、『公庫の立場を教えますから、よく覚えておいて下さい。公庫は貸したものは必ず返してもらうところですからね』などと、当たり前のことを、それもまるでケンカ越しに言うので変だな、と思ったんです。そして、仕入れ先の記載がない決算書なんて信用できないとか、税理士はいるかなどと、実に無礼なこと、失礼なことをいう。はじめから融資する気がないため、私を怒らせてこちらが『もう結構』と融資申込みを撤回するように仕向けているのがありありなんです」(M氏)
そこで2月10日、同社の顧問会計士が補足資料とともに、6項目の質問状を持参して担当のA調査役を訪ねたところ、B融資課長ともども協議して質問状の受け取りを拒否。そのため2月13日付けで支店長宛に内容証明で出したもの。(つづく)
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