「政策金融公庫への融資申込みはもちろん初めてですが、なぜこんな対応になるのか。前の国金から借りたこともないので迷惑をかけたことはありませんが、思い当たるのは国金時代の2回にわたる不可解な出来事。それが原因としか考えられません」(M氏)
今回の伏線になった過去の経偉とは、まず2005年1月、旧国金神戸支店への融資申込みだ。初めてでもあり、抵当もついていない自宅を担保にしての申込みに対し、なぜか担保評価すらしないその日の日付で却下されてしまった。あまりのことにM氏は支店長宛に再度の審査を要請する手紙を書いた。すると融資担当のC課長から電話があり、「お前は勝手に支店長に手紙を書いて何だ」、と「お前」よばわりしつつ、最後は「国金からは生涯借りられなくしてやる」という捨てゼリフを吐いたという。
それを思い知らされたのが翌06年。今度は先の十三支店へ申し込んだところ、担当者の対応もよく、3月25日に融資手続きをするために契約書が送付される手はずになった。すると契約書に換わって送られてきたのは、申請書類一式と融資出来ない旨の通知だった。
「どこかから横ヤリが入ったとしか考えられません。神戸支店の件はこちらから話しませんでしたが、『前に神戸支店で申し込まれたことがありますね』といわれたので、当社に関する何らかの記録があるんでしょう。それでも契約寸前まで面談はスムースでした。しかし、念のために神戸のC課長に確認した結果、止めておこうとなったのか。今回は相談窓口ですべての経緯を説明。その上で申請しました」(M氏)。
が、結果は前述の通り、JFCに変わっても同じ。融資申請の記録とともに、M社およびM氏に対するC課長のどのような所感が添えられているのか。何らかの申し送り事項があり、それがいつまでも影響するとすれば借り手にしてみればたまらない。
神戸支店は「Cはすでに転勤していますし、個別の案件に関わることは申しあげられません」(融資課)というお定まりの回答。当の十三支店も同様、「内容証明うんぬんは個人情報に関わること。ただ審査は申込みの都度、行なっています」(B課長)、と過去よりあくまでも現状で判断しているという。 しかし、M社は顧問会計士が再度出向いたものの、具体的に何が、どう融資要件を欠いているかの指摘がなされないことに納得していない。「個人情報」をタテに取材拒否するのが当たり前になってきているが、当のM氏を伴っての取材になら応じてもいいはず。が、両支店とも「第三者立ち会いでの個別案件の話はできない。それが当社の方針」、と頑なだ。
JFCは「透明性の高い効率的運営」「国民に対する説明責任」などを基本理念に掲げている。しかし、旧国金時代の神戸支店はもとより、十三支店でもM社とは審査過程での融資金額の引き下げなど、通常行なわれる貸し手と借り手の会話がなされていない。
この不可解な事態、M社だけの特殊ケースなのか、JFCの国民生活事業全体に共通するものなのか。M氏ならずとも気になる。JFC本社はこの事態をどう判断するか。
「融資の可否は今後の見通しや現在の財務状況など、全体を通して判断しています。ただ、申込みに対して、担保評価も含めて審査もしないで断ることはあり得ません。指摘されるような申し送り事項などというのは考えられません。公庫全体で100万件以上、1支店で何万件も処理していますし、以前は融資できなかったとしても今はできるとか、減額すれば融資可能など、窓口ではそういう話し合いをしているはずですが」(報道課)
と首を傾げる。神戸支店融資課長の“呪い”は、事実か否か。十三支店とM社の今後のやりとりでいずれ明らかになる。
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