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これでいいのかーJAの法律相談(上)
深層WATCH
2009年3月 2日 13:53

 このほど東京地方裁判所で地味ながら、注目すべき民事訴訟事件の審理が始まった。共有地の分割を求めた訴訟だが、訴えたのが80代の女性。訴えられたのはその子供たち3人という珍しい原告、被告関係。発端になったのが農協の法律相談。こじれた家庭内紛争に対して農協ははたして「我関せず」で済ませられるのだろうか。

 事件の舞台は東京・大田区の住宅地。一家の主が死去したのが3年前。その所有地約530m2の半分を妻Aさん、残る半分を長男のB氏ら3人の姉弟で相続することになった。角地にある四角形のまとまった宅地だけに、協議した結果、4人の共有地として登記することで合意した。
 建物は3棟あり、2階建て2棟をAさんとB氏が1棟ずつ、3階建てを姉と弟の持ち分とした。ただ同地に昔から居住しているのはB氏のみ。AさんとB氏の姉弟は、近くにあるAさんが相続したマンションにそれぞれに部屋があり、空家は貸家として家賃収入を得て共有地の固定資産税に当てている。
 そんな何の問題もなかった家族関係のなか、AさんがB氏ら3人に自分の持ち分を分割登記するよう提案したのが昨年のこと。
「おフクロはいま住んでいるマンションも鎌倉にあった土地も相続しているし、なぜ4人共有の土地をいまさら分割登記したいのかわからない。欲が深いといえばそれまでですが、80歳を超えて何をしようというのか、理解不能。当然、姉弟3人とも反対しました。いま貸している店子が去年秋には出る予定だったので、それも考えていたんでしょうが、何やら相談に行っていたのが農協なんです」(B氏)
 東京も昔は緑豊かな山林や畑が多かっただけに地方では馴染みの農協があり、太田、世田谷、杉並を中心に支店をもっているのが「JA東京中央」(東京中央農業協同組合)だ。世田谷区に本店を置き、3区内に15支店と賃貸管理や冠婚葬祭関連など各種施設をもつ。
「死んだ親父が組合員になっていたのが仲池上支店。その関係でおフクロも出入りしていたようです。そこでどんなアドバイスをされたのか。秋ごろにはうちの周りを測量している人間がいたようで、近所の人から『何をされるんですか』って聞かれ、おかしいなと思ったら年が明けた途端、いきなり東京地裁から訴状が届いたんです」(B氏)。
 訴状はB氏ら3人に対して「原告の共有持分相当部分を引き渡せ」というAさんの訴えである。
 実は年末から正月にかけてのB家は特殊事情を抱えていた。長年、がんを患っていた一人娘が危篤状態になっていたからだ。そんなときの母親からの訴訟である。
「たしかに母の代理人だという弁護士事務所から電話があり、いつごろなら出頭できるか都合を聞いてきた。しかし、こちらはそれどころじゃない。事情を説明すると返ってきたのが『いつごろ決着がつきますか』という信じられない言葉。弁護士事務所の事務連絡とはいえ、そのあまりにも薄情な言い方は許せないですよ」(B氏)

つづく

【恩田勝亘】

プロフィール:恩田勝亘(おんだ・かつのぶ)
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない ― 舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』 (七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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