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SFCG破綻にみる市中金融の歴史 再確認すべき社会的役割 | クローズアップ
特別取材
2009年3月 2日 10:52

 サブプライムローン問題は、昨年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻で一気に世界的な信用収縮から金融不安に陥っている。金融機関はリスク回避を念頭においた融資姿勢を強化しており、企業の資金繰りはますます悪化傾向にある。そうしたなか、商工ローン業者の最大手である(株)SFCG(旧・商工ファンド)が、3,380億円の負債を抱えて行き詰った。

法整備とバブル崩壊で市中金融業者が拡大

 (株)SFCGは、1978年12月に(株)商工ファンドとして設立。当時はまだ貸金業者の認定制度もなく、自由に貸金業を営むことができた。しかしサラ金問題がきっかけで84年1月に貸金業規制法が施行。登録が必要となり、同社も東京都に貸金業登録している。
 法整備によって貸金業者も社会的認知企業として上場できるようになり、サラ金業者の大手各社が上場。その後企業向けの市中金融業者も次々に株式公開を果たした。同社は市中金融業界では一番早く89年8月に店頭登録し、資金調達手段を大きく広げた。
 当時はバブル期ということもあり、金融機関や市場からの資金調達はスムーズに行なわれた。バブル崩壊後、市中金融業者は拡大期に入った。バブル崩壊で金融機関そのものが潰れ、生き残った銀行もバブルの戦後処理に明け暮れて中小企業への融資姿勢は完全に貸し渋り状態であったためだ。いわゆる「失われた10年」である。

 この間に上場して大手となった市中金融業者の資金源は金融機関であった。中小企業に直接融資するリスクよりも、上場企業であり、なおかつ高金利貸付で儲かっているサラ金業者や市中金融業者に大量に貸し付けた方が、リスクも少なく管理費用も安く済む、という金融機関側の考えに基づくものであった。そのため大手金融各社の資金量は急拡大していった。
 だが、その資金の捌け口が問題となった。商工ファンド(当時)は貸し手数多で、経営者の考え方も徐々に変わっていく。融資先から回収せずに保証人から回収するという手法を編み出し、中小企業に対し貸し付け攻勢に出た。こうした貸し付け手法は当然「事故」になる確率が非常に高くなるが、保証人から回収することにより最終的なリスクは低かった。保証人から回収できなければ、さらに保証人に対して高金利で貸し付ける始末だ。また、1,000万円の融資に対し6人も7人も保証を連ねさせ、リスク分散を図った。
 「腎臓売れ」事件当時、根保証問題もクローズアップされ、その後根保証は禁止されている。この事件(国会喚問もあり)をきっかけとして、国内の金融機関は、問題を指摘された商工ファンドや日栄(当時、現ロプロ)に対する融資を一気に引き上げにかかった。
 京都から出たことのない日栄の社長はこれに対応できず、資金引き上げで事業がジリ貧状態になるとともに、不当利得返還請求にも煽られて息絶え絶えとなっている(ただし、現在も上場)。
 一方の商工ファンドは、これまで融資をしていた都市銀行が引き上げにかかると、独自の資金調達ルートを外資に求める。リーマン・ブラザーズ証券等から大量の資金借入を行ない、借り換えに成功した。不良債権処理に乗じたハゲタカファンドの来襲を予測・利用した動きでもあった。「さすがSFCGの大島社長は、元三井物産のエリートだけはある」と言われたものである。

アメリカバブル崩壊 SFCGも被害者?

 ところが07年7月、世界の株式市場が急落。サブプライムローン=アメリカの不動産バブルの崩壊が始まった。
 同社も融資を受けている外国の金融機関自体が信用不安に陥り、資金ポジションが悪化。同社から資金を引き上げにかかった。別表のように07年7月末から08年7月末にかけて、同社の借入高は1,000億円減少している。完全に外銀による貸し剥がし状態となった。
 不当利得返還請求から窮地に陥っていた消費者金融業者各社は、次々と大手銀行の系列下に入っていった。SFCGも同様のダメージはあったものの、分厚い自己資本に支えられ乗り切る体制は取れていた。ところが、アメリカに端を発したサブプライムローン問題により、外資金融機関に依存していたSFCGは状況が一変する。外資金融機関が、同社の業務内容に一切かまわず資金引き上げを行なってきたからだ。
 同社は外資の返済資金捻出のため、融資先から貸し剥がしを行ない、返済財源の確保に動いた。しかし、この貸し剥がしの手法がまたも社会問題化する。長期に貸し付け、調達資金との金利差で利益を稼ぐ同社のこれまでのビジネスモデルから逸脱した行為であった。これは一方で、外銀の回収の「強烈さ」を物語っている。
 外資の貸し剥しは今期も続き、08年10月末には08年7月期決算から同年10月までのわずか3カ月間で600億円の貸し剥がしに遭っている。これでは、自己資本2,822億1,900万円(08年10月の純資産額)の同社も資金繰りが立たず、破綻するしかなかったのであろう。
 以上のように、破綻した直接原因は外銀の貸し剥しであるが、もう一方では、これまでの融資に対する不当利得返還請求に対応した財源を捻出する必要にも迫られていた。報道によると請求額は100億円から200億円程度とされている。

SFCG借入先
借入先
借入額
2008年7月期中の動き
単位:百万円
2007年7月期
減少
増加
2008年7月期末
2008年10月末
シティバンク銀行 64,935 6,030 70,965
バイエリッシュ・ヒポ・フェラインス銀行 41,655   23,050 64,705  
新生信託銀行 76,865 -46,865   30,000  
オリックス信託銀行 5,700    31,000 36,700  
リーマン・ブラザーズ証券 73,433 -65,027   8,406  
ウエストエルビー・アーゲー 12,100 -7,100   5,000  
スタンダードチャータード銀行     5,000 5,000  
インドステイト銀行     2,400 2,400  
モルガン信託銀行 5,000 -5,000   0  
ベア・スターンズ証券 2,192 -2,192   0  
小 計 281,880 -126,184 67,480 223,176  
その他 203,650     161,709  
借入総額 485,530
-100,645
384,885 317,234
営業貸付金 632,520     614,517 547,802
※07年7月末の借入金4,855億3,000万円は、金融危機で08年10月末には1,682億9,600万円減少して、3,172億3,400万円。  SFCGは、貸付先への貸し剥がし問題が報道されていたが、正にSFCG自体が貸し剥がしを受けていたことがわかる。

銀行の補完的役割

 金融機関は、雨の日には貸してくれないどころか貸し剥がしてくる。貸金業者もこれまでリスク回避のため金融機関に利用され続けてきた。
 今回のSFCG 破綻の問題は、同社だけで6,145億円(08年7月貸付額)も利用している中小企業経営者の今後の資金繰りの問題でもある。
 同社もロプロも、コンプライアンスにおけるさまざまな問題を発生させてきた。しかし、中小企業に対する金融機関の対応は、リスク回避からか不況になればなるほど厳しくなっている。
 そうした事情を踏まえて国は一時的にセーフティネット資金を貸し出しているが、融資条件などもあり、その恩恵を受けられない企業も多い。来年3月までの時限措置でもある。
 国も金融機関も、市中金融業者の社会的役割を再認識すべきであろう。市中金融業界はこれまでいくつもの問題を発生させ、行政指導を受けながら対応して今日がある。国内の金融機関は、市中金融業界の社会的役割を認識して対応してもらいたいものである。
 また、業界の健全性から見ても、コンプライアンスに問題のある業者を放置することは許されない。SFCGにしてもロプロにしても、とっくの昔に退場せねばならなかった企業である。法律によりグレーゾーン問題にも終止符が打たれており、コンプライアンス遵守に基づく経営でなければ、やってはいけない。だからこそ、今回のSFCGや鹿児島のロビンス問題が、市中金融業界全体の問題ではないということを再確認する必要がある。

【緒方 雅】

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