学校に行けない子どもたち
カンボジアの教育制度は基本的には日本と同じで、義務教育は9年間、小学校6年、中学校3年と定められている。異なるのは学年の数え方で、小学6年生以降は、中学7~9年生、高校10~12年生と数える。
注目すべきは就学率である。表1を参考にしていただきたい。就学率は全国で小学校が91.9%。この数値には驚きはないが、これが中学校になると26.1%と極端に落ちる。さらには過疎地になると、中学校への就学率は3.9%しかない。つまり過疎地ではほとんどの子どもが小学校で教育を終えてしまっている。勉強をしたくないから学校に行かないわけではない。理由としては中学校の数が足りていないこと、家計を支えるために働く子どもたちが増えていることなどが挙げられる。日本と同様、義務教育ではあるが、カンボジアでは教育を受けることが当たり前ではないのだ。
表1
■カンボジアの就学率(単位:%)
小学校 | 中学校 | 高 校 | |
全国 | 91.9 | 26.1 | 9.3 |
都市部 | 91.6 | 41.3 | 22.7 |
地方 | 92.4 | 23.7 | 6.1 |
過疎地 | 82.5 | 3.9 | 0.2 |
最近ではCMCのようなNGOをはじめ、様々な団体により学校建設が進められているため、表の数値は大きく変化していると思われる。日本テレビの「行列のできる法律相談所」で芸能人が描いた絵をオークションにかけ、その資金で学校建設を行ったニュースは記憶に新しいだろう。
スタディツアーでは、昨年CMCにより建設されたコーントライ夢中学校やボップイ安倍小学校(2004年建設)などを訪問した。いずれも過疎地である。それぞれの学校で授業を見せてもらったが、子どもたちの顔は真剣そのもので、勉強をできる喜びに満ち溢れていた。日本のように1人に1つずつ机と椅子があり、1人に1冊教科書があるわけではない。長椅子にぎゅうぎゅう詰めに座り、教科書も何人かで1冊を見ている。そのような環境でも子どもたちは一生懸命勉強し、それに満足している。何が言いたいかというと、勉強できて当たり前、勉強はしなければならないものという日本人的な感覚は、贅沢すぎるということだ。
教育問題は就学率の低さだけでない。他にも多くの問題がある。特に、日本とは大きく異なる教員(公務員)の給与の問題について次回ふれてみたい。
授業を受けるボップイ安倍小学校の子どもたち |
(つづく)
【楢崎 賢治】
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