2011年7月からの地上デジタル放送(地デジ)完全移行に向け、自民、公明両党が追加経済対策のひとつとして、学校や社会福祉施設など公共施設の地デジ対応テレビへの買い替え支援策を盛り込む方向で、検討に入ったという。予算規模は約3,800億円と見込まれている。
さらにデジタルテレビに買い替える人を対象に中古アナログテレビ2,000万台を1台2万円で国が買い取るという、案も浮上。テレビのリサイクル費用を含め予算規模は手数料などを含み約4,800億円。この案は公明党が推進しているもので、このほかに地デジ電波が届きにくい建物でケーブルに切り替える費用支援(約200億円)を含め、総額1兆円規模になるという。
こうした案が18日の自民党・公明党の与党プロジェクトで検討にはいる。
これらの策は「天下の愚策」と言われかねない問題点も含んでいる。「地デジ難民」を無くすためなのか、それとも苦境に立たされている電器業界、リサイクル業界を救済するためだけなのか、いまの段階では判然としていない。自民党の一部からからは、バラマキとの批判の声が出ているとも伝えられている。
民放連研究所が全国の世帯員2人以上の1万8,000世帯を対象にしたアンケートでは、1万4,443世帯(回収率80.2%)から回答があり、地デジ対応機を所有する2人以上世帯は、43.3%(6,252世帯)と4割を超え、このうちアンテナ等が接続されて実際に地デジを視聴可能な世帯は5,022世帯で全世帯の34.8%であった、という。また年収別でみると、1,000万円以上の世帯では普及率が6割程度なのに対し、199万円以下の世帯では24.2%と3割に満たない結果となっている。
2005年現在の日本の世帯数は4,900万強であるので、単純計算で残りの世帯が全て地デジ対応機を購入するとしたら、2,000万台では不足することになる。どういう層への支援策なのか、あまりにも漠然とした数字である。特にデジタルにしたくてもできない低所得者層は、おきざりになるだけである。
アメリカでは、デジタルへの完全移行は延期になっている。日本においては、どうしてもこのままデジタルに移行したいらしい。その裏には、きっと利権がからんでいることは多くの人が気づいている。
【武田】
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