こども病院の施工あたっては、高度な技術水準が要求される。病院という特殊な建物であることに加え、人工島という土地柄、「耐震」ではなく「免震」であることが不可欠となるのだ。条件を満たし、建設工事を請け負うことができるゼネコンは限られてくる。それはまた、PFI事業者が限られるということを意味している。高い技術力、安定した経営内容、それらの条件をクリアできるのは、一握りのスーパーゼネコンだけなのである。そして「現地建て替え工事費は当初見積りの1.5倍」と回答したのは、まさにそのスーパーゼネコンなのである。
工事を受注するつもりの(つまりPFI事業者に名乗りを上げるつもりの)スーパーゼネコンは、非常に手を挙げにくい状況となっている。「100年に一度」という不況に加え、こども病院現地建て替え工事費水増しの片棒を担いだからである。
スーパーゼネコンと呼ばれるのは、鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店の5社だけである。市側の説明が本当なら、このうち3社が現地建て替え費用は当初見積りの「1.5倍」と答えたことになる。そのうえで工事を受注したとなれば、官製談合との批判は必至である。だから名前を明かされると困るのである。市側にしても、PFI事業者としての数少ない候補をつぶすことはできない。だから名前を明かせないのである。
世界的な不況となり、国内の建設業界が軒並み業績を悪化させるなか、スーパーゼネコンとて経営基盤が磐石とはいえない。事実、スーパーゼネコンの中には福岡市側にPFI事業者になることは無理だと通告しているところもあるという。
暗雲が漂う「PFI」の行方。事業者が決まらなければ計画は頓挫するが・・・。
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