2. 業態転換で新規需要を掘り起こし
コンビニエンスストアは、これまで商店街や住宅地、幹線道路のロードサイドに出店し、24時間営業を基本とすることで、若者を中心にお客を集めていった。
すでに店舗は4万4,000店を超え、市場は飽和状態。コンビニ各社は既存店売上高の前年割れに歯止めをかけるために、新業態の開発にも積極的に取り組む。
新業態は主婦層や中高年を開拓する意味で、立地や市場戦略と関係し、また業界トップのセブンイレブンへの対抗策という側面もある。
これにいちばん積極的なのがローソンだ。同社は立地や客層に合わせた業態を作り、戦略を進めている。
新業態の一つは、生鮮食品など均一価格で揃える「ローソンストア100」。主に主婦層が多く住む住宅街のローソンをこの業態に転換させている。二つめは、「毎日食べてどんどん健康に」をコンセプトに、女性向けに店内調理のパンなどを増やした健康志向の「ナチュラルローソン」。
この2業態を柱に、既存のローソンを組み合わせた複合型など3パターンと、生鮮食品や惣菜の品数を増やし、高齢者向けに休憩場所などを設けた「ローソンプラス」を加え、6パターンの新業態で市場攻略に挑んでいる。
ローソンストア100とナチュラルローソンは、九州ではまだ展開していないが、ローソンプラスは出店や業態転換が進んでいる。
◎新業態は複数店経営の選択肢
ローソンの多業態化のきっかけとなったのは、生鮮コンビニの存在である。東京・小平市に本拠を置く九九プラスが展開する「ショップ99」は、その代表格だ。
生鮮マーケットはスーパーの大型化により、中・大型の商圏に拡大した。そのため、高齢者などの近隣住民を相手にした八百屋が減少し、住宅地は空白の市場となってしまった。
同社はここに狙いを定め、99円という単一価格を武器に攻略し、フォーマット化を実現。これにローソンが目を付け、進出したというわけである。
ローソンの新浪剛史社長も積み重ねたキャッシュの流動策として、加盟店にメリットを与えようという考えが働き、これも出店を促した理由の一つ。同社はすでにローソンの子会社となり、徐々にローソンストア100に転換されている。
ただ、コンビニ業界ではこの業態の店舗数はせいぜい2,000~3,000店が限界という見方が大勢を占める。それゆえ、ローソンもローソンストア100をコアビジネスとして成長させるというより、既存店のオーナーに複数店を経営してもらう時の選択肢の一つにしていくのではと言われている。
しかし、小売市場全体をみると地域には高齢者だけが住んでいるわけではない。年齢別の構成比率が違うだけだから、店舗の立地環境に沿って豆腐や野菜の煮物を主体にした弁当を増やした方が、コンビニの経営構造を崩さないという意見もある。(つづく)
【釼 英雄】】
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