［企業データ］
商号：　株式会社市岡　　　
代表取締役：　市岡福雄　　
所在地：　福岡市東区箱崎ふ頭４丁目３番８号
資本金：　５，０００万円　　　
設立：　１９５０年６月　　
年商：　６０億円

先手、先手の必勝戦略

　市岡は、2009年12月期も前期並みの売上高、最終利益を確保できるように、より一層の人材育成と内部統制の強化に取組んでいる。今期中に、鹿児島、熊本に新工場を開設する計画であったが、景気悪化の動向を見極められるまで着工を凍結している。先発組の強みだ。既にラインの2機の減価償却も完了しており、新式の設備導入や新工場建設への余力は充分。まさに機を窺っているという表現がぴったりだ。
　取材に対して市岡常務は「新工場建設だけに拘らず、同業者のＭ＆Ａもしくは建設業者の買収まで視野を広げて検討中」とのコメントをしている。既に構造設計ができるように人材も配置も終わった。「今後の建材・設備等の流通においてプレカット工場が主導権を握るような時代が目の前に見えてきている」という時代認識に立って着々と陣容を整えてきているはさすがだ。
　4月には新卒大学生の採用も決めているが、これはあくまで営業力強化のためという。確かに経済環境は厳しいが、土地や木材等の資材価格も下がり金融機関の住宅ローンの貸し出し審査が緩和されれば、住宅購入（建築）の潜在需要が必ず顕在化するという判断でいる。
　社員総数はパートタイマーを除き88名中25名が営業である。工場の機械設備も同業他社とのコスト競争で後れを取らないように常に更新の時機を窺い、生産性向上を図っている。借入金も長期借り入れが1億円強残っているが、手持ちの自己資金でいつでも返済可能、実質無借金経営である。また前期に2千万円ほど焦げ付いたが、既に前期で半額の1千万円を償却した。財務体質も強く磐石であり、今後不況が長引いたとしても競争力は格段に強い。

与信管理にも磨きをかける

　生産量は通常、月間8,000坪程度であるが昨年末頃から受注が約20％程度落込み、現状は6,000坪程度になっている。これで景気が回復すれば現状設備でも24時間創業で10,000坪まで生産量を増やせるという。「昨年末にＴホームから加工費を25000円程度で受注したという噂が飛び交いましたが」と質問したが「そんなことは絶対にありえません」と言下に否定された。2008年12月期の決算書を見る限りそのような安値受注をする理由が見当たらない。
　全売上高の内、建材・設備機器の売上は４０％内外である。この商品群のシェアを高めたい意向だ。特に設備機器の伸びは著しい。今後もこれまで以上に建材・設備機器のシェアを高めて行きたいが、あくまで与信管理を徹底化して不良債権の発生を食い止めなければ意味がない。
　前にも指摘した通り、今期の売り上げ目標は、厳しい状況でも最低限前期並みの60億円は目標設定している。仮に達成できなくても52億円の売り上げまで落込んでも利益確保できる防衛策は打っているのだ。面談中も関東系のパワービルダー各社や福岡市内のディベロッパー等の財務内容等についての質問が出てくるあたり、如何に慎重に与信の判断を下しているのかも伝わってくる。厳しさを覚悟しながらも、前向きに諸施策を打ち出し目標達成への並々ならぬ自身の程を示してくれた。（終わり）

【児玉直】　

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