定額給付金の支給が始まった。「お役所仕事」という言葉があるが、法案可決から実施までこんなに早くできるものか、と、違う意味で感心してしまう。
拙宅にも、先日立派な封筒に入った「申請書」なるものが届いた。どうやら、この申請書に記入して送り返すと、2週間ほどでめでたく(?)支給、という運びになるらしい。
立派な封筒の中には、返信用封筒(料金受取人払い)、B5サイズ2つ折の案内書、帳票タイプの記入用紙(申請用紙)などが入っている。それを眺めていると、支給されるにあたって一体どのぐらいの経費がかかるのだろうか…と疑問に思う。単純に考えても、これらの印刷物に加えて、封入封緘費用、郵送代金(返送分も含む)、振込手数料(書留での郵送料)、人件費…などがかかる。
08年度予算の2次補正では、支給の経費として825億1,300万円が計上されている。内訳は振込手数料が約150億円、郵送費約270億円、職員の残業代が約233億円(!?)…など。これを単純に06年3月の国内総世帯数5,110万世帯で割ると、事務経費は1世帯あたり約1,614円前後になる。
支給にまつわる事務経費の概算を公表している自治体で、その数字を比較してみると、
<鹿児島県>
支給総額(見込):271億円
事務経費(見込):11億9,000万円
05年時の総世帯数(約):72万世帯
1世帯あたりの事務経費(約):1652.8円
※【鹿児島県十島村】
支給総額(見込):1,024万円
事務経費(見込):675万円
給付世帯数:360世帯
1世帯あたりの事務経費(約):1万8,750円
<那覇市>
支給総額(見込):47億8,000万円
事務経費(見込):2億円
給付世帯数(約):13万2,000世帯
1世帯あたりの事務経費(約):1515.2円
<北九州市>
支給総額(見込):153億円
事務経費(見込):6億3,000万円
給付世帯数(約):42万6,300世帯
1世帯あたりの事務経費(約):1477.8円
<熊本市>
支給総額(見込):102億円
事務経費(見込):3億7,000万円
給付世帯数(約):28万1,850世帯
1世帯あたりの事務経費(約):1312.7円
各自治体の事務インフラの整備具合や交通の便などによって額の多寡はあるものの、概ね1,500円前後というところであろう(上記の鹿児島県十島村の場合は、有人7島のうち郵便局があるのが3島のみ、360世帯のうち150世帯が金融機関の口座を持たない、島の交通は週2便の定期フェリーのみ、などの特殊な条件が重なっての金額)。
事務経費は当然「国持ち(税金)」ということなのだが、果たしてこれを高いと見るかどうか。2兆円を「事業支出」とすると、対する事務費用825億円は約4%。一般的な事業支出に対する事務費用であれば、4%は決して高くない。しかし、単身世帯に1万2,000円を支給すると考えれば、経費率は10%を大きく超える(約1,600円として約13.3%)。
拙宅のある自治体だと、概算で1世帯あたり印刷物475円、振込手数料210円、郵送料146円。平均的に約1,600円かかるとすると、残り700円近くが残業代などの人件費や支給に向けたシステム更新などの費用となる。
給付金の経済効果の有無はさておき、できるだけ無駄のないようにしてほしいものである―と、原稿を打つキーボードの手を休めて目を遣った先には、「お受け取りを拒否する方がいる場合は、拒否のチェック欄に×を入れてください」の一文。法案成立前、本県出身の総理大臣がおっしゃった「矜持」という言葉を思い出さずにはいられない。
一体、どのぐらいの方がこの欄に「×」をつけるのだろうか・・・。思いをめぐらす春の夜更けなのであった。
【烏丸】
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