商品にかける意気込み
ただ、住宅メーカーや工務店のなかには、いまだに屋上を水平化で雨漏れが発生するのではと怯む会社が多い。ところが、エンドユーザーからは水平屋根と屋上緑化計画は素晴らしいと賛同の声を得たという。「ユーザーは誰でも屋上やバルコニーに対して憧れがあります。しかし木造住宅では、それを設けたくても多くの住宅メーカーや工務店が雨漏れを恐れ、製造責任を回避するためにユーザーには薦めようとしません」(宇都社長)。
そこで同社では、亜鉛メッキ鋼板によるスタンダード陸屋根工法で10年、ステンレス鋼板によるハイグレード陸屋根工法ならば30年の防水保証を付加。また、色々な企業に参画してもらうため、同社はNPO法人「金属防水工業会」を設立。万が一、同社が経営破綻しても、第三者の保険会社が10年間トラブルを保証することを目的としている。
こうしたたしかな保証により、あらゆるトラブルに対応できる「スカイプロムナード」による屋根の水平化を目指す同社。苦戦を強いられた局面があったからこそ、現地の住宅事情に着目し、そこにヒントを見出して「屋根の革命」につながった。
その背景には、コスト優先の業界の姿勢を憂い、常に顧客の目線を意識した宇都社長の苦悩と葛藤があったことは想像に難くない。
環境対策への取り組み
水平屋根の提案を企業戦略とし、単なる雨露をしのぐ屋根から子どもたちに対する情操教育の場、家族・近隣とのコミュニケーションスペース、屋上緑化によるCO2削減、地球温暖化、省エネ対策など環境対策の場を創造する、いわゆる「天空の楽園」として戦略展開を図る同社。今後数年間は、本州における徹底した営業展開で戦っていく方針のようだ。
また同社では、地球温暖化、CO2削減対策として断熱住宅構想を計画。高断熱省エネ住宅創出に対応するための商品開発を行なった。それが真空気密断熱材で、九州大学、熊本大学との産学協同による技術開発で商品化した。単に住宅用断熱材としてだけでなく、あらゆる断熱効果を求められるものに対しても応用できる。大手開発メーカーでも研究・開発は進められていたが、それらに先んじて福岡の中小企業がその技術を実用・商品化し、国際特許を保有したことは称賛に値する。
「屋上庭園としてのスカイプロムナードは、現在は1カ月で20棟前後ですが、少なくとも今年いっぱいで月100棟の販売ができるようにします。それが私の戦略であり夢なのです」と宇都社長は大きな目標の達成に向けて目を輝かせる。
これらの夢、戦略を見出したことにより、同社は「パワーの源」を探り当てた。個人も法人も、苦境に立たされたときにこそ、その真価が問われる。そこであきらめ挫折する者もあれば、宇都社長のように顧客目線で現地を自ら歩くことで、まるで神の啓示を得るかのごとくヒントが浮かび、かつそれを実行することで苦境を脱する道筋をつけることもよくあることだ。
そしてそれは、34年間もの時間を屋根空間利用研究に注いできた栄住産業独自の技術力に裏付けられているからこそ、なし得ることでもある。
高級住宅路線を走っている健康住宅(本社・福岡市城南区)は年間100棟を受注している。同社の畑中社長は「栄住産業さんの屋上庭園のノウハウを活用したい」と渇望している状況だ。(終り)
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