◆怒りの小沢
「不公正な検察権力、国家権力の行使だ」
小沢一郎・民主党代表は、東京地検特捜部の捜査をそう非難し、徹底抗戦の構えを見せた。
特捜部の捜査は小沢氏の秘書に続いて、西松建設の政治団体から“迂回献金”を受けていた二階俊博・経済産業相、尾身孝次・元財務相、森喜朗・元首相など自民党側にも展開するとの見方が強まっているが、それでも「与野党相討ち」とはならない。(参照)総選挙後の政権交代が有力視されているだけに、たとえ自民党側から秘書が何人逮捕されようと、「党首」を狙い撃ちされた民主党へのダメージははかり知れない。
麻生官邸の中枢では、捜査情報を握る漆間巌・元警察庁長官が事務方トップの官房副長官として捜査当局ににらみをきかせている。
「首相が漆間を起用したのはこんなときのためだ。政権の土壇場になって、その布石が効果をあげた」
自民党幹部さえ、《国策捜査》のにおいが強いことを疑っていない。
検察もルビコンを渡った。いったん野党第一党の党首を政治資金規正法違反という“形式犯”で強制捜査にとりかかった以上、検察側は、「小沢スキャンダル」を徹底的にリークして捜査の正当性をアピールするしかなくなった。
検察が政争にこれほど深くかかわるのは、三木内閣が政敵の田中角栄逮捕を促したロッキード事件以来かもしれない。
東京地検の佐久間達哉・特捜部長はもともと捜査畑ではなく、赤レンガ組といわれる法務官僚で、「慎重な実務家」との定評があった。半面、特捜部長就任以来、大きな成果がなく、焦りがあったともいわれる。
しかし、これほど政治に影響を与える事件が一特捜部長の独断で進められるはずがなく、なぜ、検察首脳部が結果的にボロボロの麻生政権に加担するような《国策捜査》に「ゴーサイン」を出したのかは大きなナゾだ。
今後、小沢氏サイドに政治資金規正法のような“微罪”ではなく、もっと大きな疑惑が出てきて立件するのでない限り、検察の歴史に大きな汚点を残すことになるのは間違いない。(つづく)