西松建設のダミー政治団体「新政治問題研究会」「未来産業研究会」(ともに06年解散)から、寄附もしくはパーティ券代の支払いを受けていた政治家の名前が次々と報じられている。「大物政治家」としては、政治資金規正法違反で公設第1秘書が逮捕された小沢民主党代表をはじめ、自民党の森元首相、尾身元財務相らが資金管理団体への寄附。二階経産相が代表を務める二階派の「新しい波」がパーティ券を購入してもらっている。いずれも数百万~千万単位の資金提供がなされており、数万円~数十万単位のその他の政治家とはかなりの差がある。いずれにしても、名前が取りざたされる政治家側は、早いところ返金した方が得策と判断するのが普通。しかし、返金したくてもできない状況なのである。
西松建設のダミーであるふたつの政治団体の収入原資は、西松建設の金そのものだったとされる。4日の小沢代表の会見でも「返金」についてのやりとりがなされた。小沢代表は違法性が確認されれば返金するとしている。「新政治問題研究会」「未来産業研究会」が支出した金が、全て西松建設の金だったということが法的に証明され、確定した場合ということになる。しかし、ことはそう簡単ではない。
政治家側がもらった金が、寄附であれパーティ券代であれ、支出した西松建設の政治団体はふたつとも06年に解散しているのである。現状では返金先がないということだ。「西松建設に返せばいいじゃないか」との意見もあろうが、法的には西松建設の政治団体の金が、全て会社(西松)の金だったということが証明されていない。うっかり西松建設に振込みでもしようものなら、政治家側から西松建設への「寄附」となってしまい、逆に「公職選挙法」に抵触してしまう。返金する相手が存在しないことで、政治家側から困惑の声が上がっているのである。
パーティ券を捌く場合、広くばら撒いてしまうため、パーティ券購入者に胡散臭い相手が混じってしまうケースは多い。たいていは、事件が起きてあわてて返金するのだが、今回のケースは相手が解散した政治団体。しかも収入原資が西松建設社員の金か、会社の金か、あるいは裏金か判然としない。珍しいケースなのである。事実関係の解明が進むのを見守りながらということになりそうだが、「返金」作業には時間がかかりそうだ。「なんで会社名でパー券を買わなかったのだろう?」何も知らずに巻き込まれた議員秘書のボヤキが聞こえてきた。